CV病変にて診断が可能であった慢性活動性拒絶反応の3症例

(独)国立病院機構千葉東病院 腎・糖尿病・内分泌内科
* 川口 武彦
(独)国立病院機構千葉東病院 腎病理研究部
北村 博司
(独)国立病院機構千葉東病院 外科
松本 育子、伊藤 泰平、青山 博、大月 和宣、圷 尚武、
丸山 通広、浅野 武秀、剣持 敬

 腎移植後の慢性的な腎機能障害において、慢性拒絶反応は重要な鑑別疾患の1つとして挙げられる。今回エピソード腎生検にて、尿細管・間質に炎症細胞浸潤は見られないものの、弓状動脈から小葉間動脈に炎症細胞浸潤を伴う内膜線維性肥厚(CV病変)を認め、慢性活動性T細胞関連型拒絶の診断に至った3症例を報告する。以下3例ともに、弓状動脈から小葉間動脈に活動性を伴うCV病変が見られなければ、慢性活動性拒絶の診断は不可能であった。これらは慢性T細胞性関連拒絶の病理診断における問題点を提起する症例であり、必ずしも腎生検で慢性活動性T細胞性関連拒絶を検出できるとは限らないことを示唆する。慢性活動性T細胞性関連拒絶の診断とマネージメントについて、病理学、免疫学、臨床の立場から再考が望まれる。

【症例1】49歳女性(原疾患:IDDM)。生体膵腎同時移植後Cr値上昇(1.1→1.3mg/dl)に対してPOD132に腎生検を行い、急性T細胞関連型拒絶(IB、i2、t3、g1、v0、ptc1、c4d1、ah1、aah0)の診断にてステロイドパルスを施行した。その後Cr値の改善はなく1.6mg/dlまで上昇したためPOD145後に再生検したところ、弓状動脈に内膜の線維性肥厚を伴う炎症細胞浸潤が見られ、慢性活動性T細胞関連型拒絶(t0、i0〜1、g0〜1、v0、ptc0、c4d0、ct1、ci1、cg0、cv1、ah1、aah0)の診断となった。

【症例2】48歳女性(原疾患:CGN)。献腎移植後Cr値上昇(1.6→3.1mg/dl)に対してPOD130に腎生検を行い、弓状動脈に細胞浸潤を伴う高度の内膜線維性肥厚を認め、慢性活動性T細胞関連型拒絶(t0、i0、g1〜2、v1、ptc1、c4d1、ct1、ci1、cg1、cv3、ah0)の診断となった。

【症例3】12歳男性(原疾患:低形成腎)。献腎移植後Cr値上昇(0.7→1.8mg/dl)に対してPOD152に腎生検を行い、小葉間動脈に高度の内膜炎を伴う急性T細胞関連型拒絶(IIB、i3、t1〜2、g1、v2、ptc2〜3、c4d0、ah1)の診断にてステロイドパルスを施行した。その後Cr値の改善はなく3.2mg/dlまで上昇したためPOD210に再生検したところ、弓状動脈から小葉間動脈に内膜の線維性肥厚を伴う炎症細胞浸潤が見られ、慢性活動性T細胞関連型拒絶(t0、i0〜1、g0、v1、ptc0、c4d0、ct1〜2、ci2、cg0、cv1〜2、ah1〜2、aah0)の診断となった。


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