移植後比較的早期に紫斑病性腎炎再発が疑われた一例

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科
* 白井 小百合、今井 直彦、河原崎 宏雄、柴垣 有吾、安田 隆、木村 健二郎
聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科
佐々木 秀郎、力石 辰也
川崎市立多摩病院 病院病理部
小池 淳樹

 症例は、24歳男性。20歳時に、蛋白3+、血尿3+、Cr 4.5mg/dlを指摘され、当院紹介され腎生検を施行。その際、紫斑の病歴と組織所見より紫斑病性腎炎(ISKDCⅤb+Ⅵ型)と診断され、ステロイドパルス療法+PSL内服を行うも急速に腎機能が悪化し、22歳時に透析導入。23歳時に母親をドナーとした生体腎移植を行った。ABO適合で、抗ドナーHLA抗体は陰性であった。0hr腎生検で持ち込み病変はみられなかった。導入免疫抑制は、TAC+MMF+MP+BAXで行い、急性拒絶反応なく経過されていた。
 移植後早期より血尿が認められ、3ヶ月後のプロトコール生検では、光顕上明らかな所見はなかったが、蛍光所見でIgAがメサンジウム領域に軽度陽性で、電顕でもメサンジウム領域にdepositが認められた。その後尿蛋白も出現し、移植14ヶ月後尿蛋白2+(0.6g/gCr)、尿潜血3+(変形赤血球あり)にて腎生検を施行。その結果メサンジウム細胞の増殖と基質の拡大が見られ、蛍光所見でメサンジウム及び係蹄壁にIgAの強い陽性所見と電顕所見でメサンジウム領域への明瞭なdepositが認められ、紫斑病性腎炎の再発と診断した。
 紫斑病性腎炎は、移植後5年での再発率は35%、再発による腎喪失率は11%と高く、HSPN発症後3年以内にESRDに陥った症例は、再発腎から腎喪失に移行しやすいことが報告されている。紫斑病性腎炎再発時期の判断は非常に難しいが、進行していく病態を考慮すると、診断後可及的早期に積極的な治療を行うことが必要と思われる。


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