肺結核に対する抗結核療法をきっかけに、高度の細胞性拒絶反応が認められた一例

東京慈恵会医科大学 腎臓高血圧内科
* 中田 泰之、山本 泉、小林 賛光、松尾 七重、丹野 有道、
大城戸 一郎、坪井 伸夫、横山 啓太郎、横尾 隆
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は29歳男性。IgA腎症による末期腎不全に対して2011年2月17日にPD導入、その後残腎機能低下し生体腎移植を行うこととなり、同年7月14日に実父をドナーとする血液型適合生体腎移植を行った。移植後の血清Cr1.5mg/dl前後を推移していた。2012年6月のプロトコール腎生検ではBanff 分類でBorderline changeのみであった。その際偶発的に肺結核を診断され、6月28日より4剤抗結核療法を開始した。退院前タクロリムス(TAC)は8mg内服下でTrough 3.1ng/mlであった。退院後TAC trough値の頻回モニタリングのもとで抗結核療法を継続したが、同年10月1日の血清Cr 2.1mg/dl、同月14日で3.2mg/dlと急激な腎機能悪化と移植腎の腫大を認め、同月16日に精療目的で入院となった。入院時TAC 8mg内服下でTrough 1.8ng/mlと血中濃度の低下を認めた。エピソード腎生検では、広範な高度の尿細管炎だけでなく小葉間動脈レベルでの内皮炎を随伴し、Banff 分類でAR2Aと診断した。ステロイドパルス療法を2クール行い、血清Crは3.9mg/dlから2.3mg/dlまで改善を認めた。抗結核薬療法は、CYP3A4代謝亢進による免疫抑制剤の効果減弱の恐れがある。その上で、本例は教唆に富む一例と考え報告する。

戻 る  ページの先頭