ABO不適合腎移植後1年目にPlasma cell-rich rejectionおよび抗体関連型拒絶反応を認めた一例

東京慈恵会医科大学 腎臓高血圧内科
* 古谷 麻衣子、山本 泉、丹野 有道、小林 賛光、中田 泰之、
菅野 直希、大城戸 一郎、坪井 伸夫、横山 啓太郎、横尾 隆
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は33歳男性。原疾患IgA腎症の慢性腎不全で2010年6月腹膜透析導入。2011年5月母親をドナーとする血液型不適合生体腎移植を施行。移植後3ヶ月目プロトコール腎生検(s-Cr1.5mg/dl)は明らかな異常所見を認めなかった。移植後1年目にs-Cr5.7mg/dlと上昇が見られ、腎生検で形質細胞の目立つ尿細管炎(Banff : t2)および好中球浸潤を伴う傍尿細管毛細血管炎(ptc3)を認め、ARⅠAおよび抗体関連型拒絶反応(AMRⅡ)の疑いと考えられた。
Luminex法によるLAB Screen single HLA検査と追加で施行したドナーHLA-DQ抗原の結果から、抗DQ 4抗体および抗DQ6抗体が抗ドナー抗体と考えられた。ステロイドパルス療法500mg×3days、大量γグロブリン静注(IVIG)、血漿交換療法を施行したが、s-Cr4.0mg/dl前後で改善に乏しかったため、さらにステロイドパルスを2回追加した。
治療後約1カ月目に施行した再生検では、尿細管炎の改善が認められたものの、傍尿細管毛細血管炎(ptc2)の残存が認められた。IVIG、血漿交換および、Rituximab 200mg/day単回投与による追加加療にて、s-Cr2.8mg/dl前後で安定した。本例は、plasma cell-rich rejectionおよび抗DQ抗体による抗体関連型拒絶反応と考えられた症例で、難治性とされるplasma cell-rich rejectionの治療法や、普段抗原検査がルーチン化されていないHLA-DQの重要性を示唆する症例と考え報告とする。


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