Transplant glomerulopathy(TGP)症例の臨床病理学的検討

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、石田 英樹、土岐 大介、野崎 大司、尾本 和也、
田邉 一成
東京女子医科大学 第二病理
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理
小池 淳樹

【目的】Transplant glomerulopathy(TGP)はBanff分類では慢性抗体関連型拒絶反応(chronic active antibodymediated rejection; c-AMR)のひとつとされている。今回我々は、腎移植後のTGPについて臨床病理学的に検討した。

【方法】2006年1月から2012年10月までに、東京女子医大泌尿器科にてTGPと診断した50症例の腎移植患者とその患者の85移植腎生検を対象とし、臨床経過記録と移植腎生検標本を基に検討した。

【結果】TGPと診断した85検体のうち、35検体は軽度(Banff scoreでcg1)、28検体は中等度(cg2)、22検体は高度(cg3)であった。
 傍尿細管毛細血管炎(peritubular capillaritis)は73検体(86%)に認め、糸球体炎は64検体(76%)、間質の線維化と尿細管萎縮(interstitial fi brosis and tubular atrophy; IF/TA)は70検体(83%)、傍尿細管毛細血管基底膜の肥厚は71検体(84%)、間質炎は39検体(47%)に認めた。
 傍尿細管毛細血管(PTC)へのC4d沈着は48検体(57%)に認め、そのうち38検体(45%)はdiff useに沈着(Banff scoreでC4d3)し、残り10検体(12%)はfocal(C4d2)に沈着していた。糸球体係蹄(glomerular capillaries; GC)へのC4dの沈着は77検体(91%)に認め、diff useな沈着は62検体(73%)、focalな沈着は15検体(18%)に認めた。
 抗HLA抗体の検索は69回の生検時に施行されており、抗HLA抗体が57回(83%)で検出され、そのうち33回(48%)は抗ドナーHLA特異抗体(DSA)であった。更に抗HLA Class II抗体に関しては49回(71%)検出され、そのうち31回(45%)は DSAであった。
 50例のTGP症例のうちで、23例(46%)に生検後の移植腎機能の低下を認め、移植腎喪失は7例(14%)に認めた。

【結論】TGPは傍尿細管毛細血管炎、糸球体炎、傍尿細管毛細血管基底膜の肥厚を高率に伴っていた。PTCへのC4dの沈着は6割弱で、PTCへのC4d陰性のTGPの存在が多いことがわかった。ただしGCへのC4dの沈着は高率に認めた。
抗HLA Class II抗体の存在が、TGPと関連あると思われた。TGP症例の移植腎の予後は、現在の免疫抑制プロトコールにおいても必ずしもよいとはいえなかった。

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