Transplant glomerulopathyの組織像を呈した腎移植後超長期の一例

東京大学医学部附属病院 病理部
* 新谷 裕加子、阿部 浩幸、深山 正久
東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科
山野 水紀、池田 洋一郎、浜崎 敬文、藤乘 嗣泰
山口病理組織研究所
山口 裕
東京大学大学院医学系研究科 人体病理学教室
深山 正久

 59歳男性。20歳時に血液透析導入。原疾患不明(悪性高血圧の可能性あり)。22歳時に生体腎移植(兄:血液型適合)を施行される。12年後に、血液透析再導入される。35歳時に2次生体腎移植(兄:血液型適合)施行。急性拒絶反応(peak Cr 10.4mg/dL)を認めたため、ステロイドパルス、抗リンパ球グロブリン投与、血漿交換を行い、Cr 1.4mg/dLと腎機能改善し、以後、問題なく経過していた。2次移植後16年目から蛋白尿(1+)が出現、21年目に(2+)へ増量した。23年目から左移植腎の軽度疼痛を自覚、次第に頻度が増した。Cr1.6-1.7mg/dLで推移していたが、Cr2.2mg/dL(eGFR 27.7ml/min)まで上昇したため、腎生検を施行した。
 病理学的には、糸球体に係蹄の二重化がみられ(cg2)、間質には中等度の線維化と尿細管の萎縮が認められた(ci2、ct2)。細動脈の硝子化が散見され(ah2)、カルシニューリン阻害剤(CNI)による細動脈変化も伴っていた。また、尿細管周囲毛細血管の基底膜(ptcbm)の肥厚が目立っており、電子顕微鏡所見でも基底膜の多層化が確認された。蛍光染色でptcにC4dは陰性であった。
 臨床的には、ネオーラル 100mg、ブレディニン 100mg、プレドニン 5mg内服中で、服薬コンプライアンスは良好、CNI血中濃度は40-60 ng/mLであった。1次グラフトに対する抗ドナー抗体(DSA)は陽性であったが、2次グラフトに対するDSAは陰性で、自然経過でCr1.9mg/dLまで改善した。
 臨床的に慢性拒絶は考え難い経過であったが、病理学的にTransplant glomerulopathyの像を呈した腎移植後超長期症例を経験したので報告する。


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