BKウイルス腎症に急性細胞性拒絶反応を合併し、治療および免疫抑制剤投与量調整に苦慮した1例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 小林 賛光、山本 泉、中田 泰之、松尾 七重、丹野 有道、
大城戸 一郎、坪井 伸夫、横山 啓太郎、横尾 隆
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は40歳女性。IgA腎症由来の慢性腎機能障害で2011年1月に腹膜透析を導入し、2012年9月、実父からの生体腎移植を行った。同年12月にサイトメガロウイルス腸炎に罹患しバルガンシクロビル450mgで加療後に軽快退院となった。2013年1月7日プロトコール生検目的で入院時にCr1.0mg/dlから1.2mg/dlと軽度上昇を認めた。腎生検では主に皮髄境界部や髄質部に炎症細胞浸潤が目立ち、集合管を主体とした尿細管炎、核内封入体を伴うSV40陽性の尿細管上皮細胞も認められたため、BKウイルス腎症と診断した。しかしながら皮質部のSV40陰性の領域においても尿細管炎、間質炎を認め急性細胞性拒絶反応の合併を疑い、ステロイドパルス療法、IVIGと免疫抑制剤の減量(TAC7mgから6mg、MMF1000mgから750mg)を行い、Cr1.0mg/dlで退院となった。2月7日にf/uの腎生検を行った結果、拒絶反応を示唆する所見は認めなかったが、髄質部の炎症細胞浸潤とSV40陽性細胞の残存が見られたためMMFをさらに500mgまで減量し、血中BKウイルス量の低下ならびにMMFの推計AUC0-1260mg・h/Lと推奨範囲内であることを確認した上でTAC6mg、MMF500mgで2月14日に退院となりその後も安定している。今回BKウイルス腎症に急性細胞性拒絶反応を合併し、両者に対し集学的治療が奏効した1例を経験した。本例は病理組織学的にBKウイルス腎症を診断する上でその病変の部位、広がり方にも注目することの重要性を示す1例と考えられた。さらに本例ではMMFのTDMも行い適正濃度に投与量を調整することで、BKウイルス腎症、拒絶反応の両者をコントロールでき、その有用性も示唆された。


戻 る  ページの先頭