糸球体ボウマン嚢上皮にSV-40陽性細胞を認めたBKウイルス腎症の1例

東京女子医科大学 病理診断科
* 川西 邦夫、西川 俊郎
東京女子医科大学 第二病理
本田 一穂、小田 秀明
東京女子医科大学腎センター 病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学 泌尿器科
清水 朋一、野崎 大司、尾本 和也、田邉 一成
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹

 症例は61歳男性。糖尿病を原疾患とする慢性腎不全に対し、2007年夏(56歳時)に血液透析導入となった。2010年夏(59歳時)、54歳の妻をドナーに生体腎移植を施行した(B →B、DSA陰性)。移植後7日目にCr上昇あり、移植腎生検で血管型拒絶反応を伴う急性混合型拒絶反応と診断し、ステロイドパルス、リツキシマブによる加療を行った。移植後59日の生検で拒絶の所見が持続するため、ステロイドパルス、グスペリムスの投与を追加した。その後、Cr1.6mg/dL程度で経過し、移植後119日目の生検で拒絶反応の改善を認めたため、外来で経過観察とした。2012年夏、外来受診時の採血で、Cr1.95mg/dLと上昇があり、急性拒絶反応を疑い、腎生検を施行した。広範な尿細管炎、尿細管上皮傷害に加え、核内封入体の形成を認め、SV-40の免疫染色が陽性であることからBKウイルス腎症と診断した。SV-40陽性細胞は、髄質・皮質の尿細管のみならず、一部のボウマン嚢上皮にも認められた。本症例は、移植後2年と通常より遅い時期に発症したこと、ボウマン嚢上皮にまで感染が拡大したことなど、BKウイルス腎症として非定型的と考えられため、その臨床経過と病理所見を再検討し、文献的考察と合せて報告する。


戻 る  ページの先頭