腎移植後に発症したIgG4関連腎症と考えられた一例

三重大学 腎泌尿器外科
* 西川 晃平、舛井 覚、神田 英輝、山田 泰司、有馬 公伸、杉村 芳樹
名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
武田 朝美、両角 國男

 症例は54歳女性。中学の頃に溶連菌感染を契機に腎炎を発症し、その後徐々に腎機能が悪化した。原腎生検は施行されていない。平成21年12月に夫をドナーに血液型不適合Preemptive腎移植を施行、術後は血清Cre1.0-1.2mg/dlと良好で、移植後2ヶ月、6ヶ月、1年のProtocol生検においては大きな異常は認めなかった。維持免疫抑制はタクロリムス、ミコフェノール酸、メチルプレドニゾロン(2mg)であった。平成24年2月に移植後2年目のProtocol生検を施行したところ、間質への巣状の高度な形質細胞浸潤を認めた(図1)。急性拒絶反応なく、SV40negative、EBV negativeであり、花筵状の間質線維化は伴っていなかった。浸潤形質細胞には異型性なくκ>>λであったが、IgGサブクラス染色ではIgG4がほとんどを占めていた(図2)。血液Dataでは血清IgG 1820.0mg/dl(IgG4 436mg/dl、21.3%)と高値であり、CTにて水腎症はなく移植腎門部〜上部尿管周囲に造影効果を伴わない腫瘍性病変を認めた。以上の所見よりIgG4関連腎症が最も疑われた。しかしこの時点では明らかな腎機能障害が認められず、経過観察とした。その後2回の腎生検では病理組織上はIgG4優位の形質細胞浸潤がひろがり被膜内や間質障害部に目立った。腎機能は徐々に悪化し平成24年12月には血清Cre1.50mg/dlまで上昇したため、メチルプレドニゾロンを16mgへ増量した。その結果、血清IgG4は著明に低下し、CTで認めていた腎門部の腫瘍性病変は消失した。平成25年3月の腎生検にでは形質細胞浸潤はやや減少したがIgG4優位であり、花筵状の間質線維化はみられなかった(図3)。臨床的には、血清Creは緩徐に上昇傾向であり、更にステロイド増量に伴うCMV再活性化、JCウイルス血症なども認めており、現在メチルプレドニゾロンの減量や免疫抑制剤の調整を行いつつ厳重に経過観察中である。


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