心移植にみられる細胞性拒絶反応および抗体関連型拒絶反応

東京女子医科大学 第二病理
* 吉澤 佐恵子、宇都 健太、本田 一穂1、小田 秀明
東京女子医科大学 病理診断科
西川 俊郎
コロンビア大学 病理
Charles C Marboe

 免疫抑制剤の進歩により心臓移植後の1年生存率は90%を超え、治療成績は改善しているが、依然として移植後の拒絶反応、特に抗体関連型拒絶反応は、患者の予後に関わる重要な問題である。2000年から2010年にアメリカコロンビア大学において施行された心移植症例765名(平均53才、男性587名)のうち、心内膜心筋生検において中等度以上の急性細胞性拒絶反応が認められた症例は、移植後1年目は183例(24.9%)、移植後2年目以降は66例(11.5%)であった。抗体関連拒絶反応に関しては、移植後1年目は37例(5.0%)、移植後2年目以降は26例(4.5%)であった。移植心における細胞性拒絶反応は、血管周囲や間質へのリンパ球浸潤の程度と広がり、および心筋細胞障害の程度に基づいて、国際心肺移植学会の提唱する診断基準に従い病理組織学的に診断される。抗体関連拒絶反応の組織学的特徴は、毛細血管内皮細胞の腫大、血管内のマクロファージの集族、間質の浮腫であり、補体C4dの染色もAMRの検索に併用される。心筋生検検体において拒絶反応以外に高頻度に認められる所見として、以前の生検部位周辺の肉芽組織やQuilty効果(心内膜下に限局するリンパ球の密な集簇)があり、細胞性拒絶反応との鑑別が問題となる場合も多い。日米における心移植の現況および心内膜心筋生検による拒絶反応の病理組織診断に関して報告する。


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