プロトコール移植腎生検にてpost-transplant lymphoproliferative disorder(PTLD)と診断し得た一例

聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科
* 北島 和樹、佐々木 秀郎、中澤 龍斗、佐藤 雄一、力石 辰也
聖マリアンナ医科大学 診断病理
小池 淳樹
川崎市立多摩病院 病院病理部
小池 淳樹
聖マリアンナ医科大学 腎臓高血圧内科
谷澤 雅彦、鶴岡 佳代、河原崎 宏雄、今井 直彦、白井 小百合、
柴垣 有吾

【症例】70歳台女性。良性腎硬化症による慢性腎不全より血液透析導入。約1年の血液透析を経て60歳台の夫をドナーとしたABO血液型不一致生体腎移植術を施行した。導入免疫抑制はタクロリムス徐放性剤(TACER)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ステロイド、バシリキシマブで行った。術後経過は良好で拒絶反応を生じることなく血清Cr 0.6 mg/dl前後で経過していた。術後2ヶ月のプロトコール生検では『CNI nephrotoxicity』と『medullary-ray injury』を指摘された為、TACERを減量し移植腎機能は安定していた。しかし術後1年のプロトコール生検で尿細管萎縮と稠密な単核球細胞浸潤を伴う間質拡大を認め、EBER(EBV small encorded RNA)insitu hybridization法(ISH法)により浸潤細胞にEBVが確認された。病理組織学的診断は『EBV tubule-interstitiallymphoid infi ltration, probably reactive』であった。PTLD組織分類(WHO classifi cation of tumors)ではEarlylesionsに該当した。血中EBV-DNA量は1.2×102 copies/ 106 PBL でありウイルス量は少なく、また臨床所見・画像検査所見に異常を認めなかったことから免疫抑制剤を減量する方針とした。MMFを1000mg/日から500mg/日に減量し約1か月後の2013年1月に移植腎生検を施行した。病理所見上、明らかなPTLDを示す所見を認めなかった。現在MMF500mg/日のまま経過しているが、移植腎機能は良好である(s-Cr 0.65mg/dl)。

【考察】移植腎の生着率は免疫抑制療法の改良により向上しているが、悪性腫瘍の発症が腎移植患者の長期予後を決定する要因の一つとして重要になっている。なかでも移植後発症するPTLDは比較的頻度が高く、致死的合併症の1つとされている。本症例はISH法によりPTLDの早期の組織変化を捉えることができ早期に治療を開始することが可能であった。

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