膀胱機能検査結果から移植腎に発生する髄放線障害を予測できるか?

東京女子医科大学泌尿器科学教室
* 角山 邦子、清水 朋一、石田 英樹、田邉 一成

【目的】腎移植前に膀胱機能検査を行うことにより、移植腎に術後発生する髄放線障害を予測できるかどうかを後ろ向きに検討する。

【方法】対象は移植前に膀胱機能検査を行っており、かつ移植後腎生検において髄放線障害をみとめた53名(男性29名、女性24名、平均年齢46.0±13.4歳、平均透析期間54.8±62.4か月、平均ドナー年齢55.7±12.5歳)。髄放線障害を病理学的分類に従い、虚血性変化に関連するもの10名(グループ1)、泌尿器科的合併症に関連するもの43名(グループ2)の2群に分類し、これら2群間で膀胱機能検査結果を比較検討した。

【結果】術前最大膀胱容量はグループ1が265.3±139.6mL、グループ2が187.0±123.0mLと2群間で有意差を認めた(p=0.04)。初期尿意はグループ2のほうが低値であり、蓄尿時および排尿時最大膀胱内圧も高圧な傾向を認めたが、有意差はなかった。移植前一日排尿量もグループ2のほうが少ない傾向を認めた。

【結論】膀胱容量の減少と移植前一日排尿量の減少は、尿路合併症に伴う髄放線障害の一因となりうることが今回の検討で分かった。移植前に排尿機能を正しく評価しておくことが、移植腎機能保持に貢献すること、移植待機期間の短縮と移植前自尿を保つことにより術後腎機能障害の原因の一つである髄放線障害を回避できる可能性が示唆された。

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