腎移植後IgA再沈着に関するリスク因子の検討

香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科
* 祖父江 理、原 大雅、森脇 久美子、河野 雅和
同 病理部
串田 吉生
同 泌尿器・副腎・腎移植外科
林田 有史、上田 修史、筧 善行
東京女子医科大学 泌尿器科
乾 政志

【目的】IgA腎症は腎移植後の再発が高率であり、時にプロトコール生検時に沈着のみの再発を認めることもある。 IgA再沈着が移植腎機能低下の原因であるか結果であるかは結論が出ていない。今回我々は腎移植後再発IgA沈着 症と移植腎機能との関連を明らかにすることを目的に検討を行った。

【方法】当院にて生体腎移植を施行したレシピエントのうち、原疾患がIgA腎症であるレシピエント(n=45)を対象 とし、再発群(n=18)を対象、非再発群(n=27)を比較対照として、後ろ向きコホート研究を行った。再発のリス ク因子はロジスティック解析にて検討した。

【結果】再発は平均30か月後に確認され、61%は再発時に検尿異常を認めなかった。再発群中、5例はメサンギウ ム増殖を伴わないIgA沈着のみの再発であり、メサンギウム増殖を伴う再発例では観察期間が有意に長期であった。 1年後の移植腎機能は非再発群と比較して再発群で低値であった(非再発群 53±2ml/min/1.73㎡ vs. 再発群 42± 2ml/min/1.73㎡)。1年後の移植腎機能が40 ml/min/1.73㎡以下であることは、年齢、持込みIgA沈着症、MMF の血中濃度などで調整したのちもIgA再沈着の唯一の予測因子であった。(調整OR=31.9, [95%CI=2.34−427], P< 0.01)。また、再発症例に対して6例に扁摘を施行した。うち、半月体形成を認めた3例に扁摘パルス療法を行った。

【結語】移植腎機能低値のレシピエントではIgAは再沈着しやすい傾向にあり、早期発見、早期治療を行うためにも プロトコール生検による再沈着の段階での検出は有用である。

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