移植後血栓性微小血管障害症の治療に難渋した一例

市立札幌病院 泌尿器科
* 岩原 直也、村井 太一、鈴木 英孝、川口 愛、中村 美智子、秋野 文臣、 田中 博、関 利盛
市立札幌病院 腎臓移植外科
福澤 信之、原田 浩
市立札幌病院 病理診断科
辻 隆裕、深沢 雄一郎

 27歳、男性。悪性高血圧による急性腎障害を呈し慢性腎臓病に至った。約2年間の腹膜透析を経て、父をドナーにしたB→Oの血液型不適合腎移植を施行した(抗B抗体価 IgG/IgM 32/8)。抗ドナーHLA抗体は陽性であった。免疫抑制剤はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス、メチルプレドニゾロンで導入した。
 術前血清クレアチニン(Cr)は12.02mg/dlから、術後5日目にはCr 2.71mg/dlまで下降したが、術後6日目にCr 2.86mg/dlまで上昇し、腎生検を施行した。迅速結果では急性抗体関連拒絶反応(AABMR)が疑われたため、血漿交換およびステロイドパルスを施行した。追加報告で血栓性微小血管障害症(TMA)の診断となり、原因として薬剤性が考えられため、タクロリムスを減量した。一時的にCrの改善を認めたが術後13日目にCr 3.11まで上昇し腎生検を施行した。AABMR grade Uの診断で、ステロイドパルス療法および塩酸グスペリムスの投与を施行し、術後20日にはCr 2.47mg/dlに下降した。術後27日目に生検施行し、TMAの改善を認めたが一部残存病変を認め、タクロリムスをシクロスポリンに変更し、エベロリムスを中止した。その後、腎機能の悪化は認めずCrは2.52mg/dlで、術後43日目に退院した。


戻 る  ページの先頭