腎移植後にTMAを呈した1例

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 福澤 信之、村井 太一、田中 博、原田 浩
市立札幌病院 泌尿器科
岩原 直也、鈴木 英孝、川口 愛、中村 美智子、 秋野 文臣
市立札幌病院 病理診断科
辻 隆裕、深澤 雄一郎

 腎移植後TMAの1例を報告する。
【症例】38歳女性。妹をドナーに血液型不適合生体腎移植を施行。術14日前にTAC、MMF、エベロリムス(EVR)の3剤で導入、術7日前にリツキシマブ100mgを投与。抗A体価はIgG/M=x8/x4と低力価で血漿交換を施行せず腎移植を施行。術後3日にsCrの再上昇を認め急性拒絶反応を疑いステロイドパルスを施行し移植腎生検(Bx)を施行、血管炎を伴うBanff IIBのATMRの診断でデオキシスパーガリンを7日間追加投与した。治療後腎機能は改善したが再BxでATMRの残存を認めサイモグロブリンを6日間追加投与しCr1.5まで下降した。この時点でTAC-AUCが低値であったため10mg/dayまで増量後2日目に咽頭痛、40℃の高熱、水様下痢となり、その2日後に肉眼的血尿を呈した。血液生化学所見では溶血性貧血、血小板減少、破砕赤血球、ハプトグロビン低値、腎機能悪化を認めた。細菌感染を疑い抗菌薬投与と免疫抑制剤休薬し血尿および血液生化学所見は改善した。抗菌剤投与前の血液、便培養検査は陰性であり、病原性大腸菌は認めなかったがプロカルシトニン3であった。発症翌日のBxではTMA像を呈し、病原性大腸菌感染以外の細菌感染によるTMAと診断した。TMA発症後8日で2.8→1.5と比較的速やかに改善し現在は術後9ヶ月を経過したが腎機能はCr1.2と良好である。


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