移植後早期にミコフェノール酸モフェチルをエベロリムスに変更した生体腎移植患者の移植腎生検所見

九州大学大学院 病態機能内科学
* 土本 晃裕、升谷 耕介、松隈 祐太、野口 英子、鶴屋 和彦、北園 孝成
九州大学大学院 臨床腫瘍外科学
栗原 啓、錦 建宏、北田 秀久、 田中 雅夫
九州大学大学院 包括的腎不全治療学
鶴屋 和彦

【背景】2011年末よりわが国においてもエベロリムス(EVR)が腎移植患者にも保険適用となった。ただし、EVRを用いた免疫抑制プロトコールは施設間で異なり、それぞれのプロトコールについて有効性と安全性の検討が行われている。
【対象と方法】当院では、原則としてタクロリムス(Tac)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニソロンによる維持免疫抑制療法を開始し、悪性腫瘍の既往のある患者では移植後3ヶ月以降に、MMFの副作用やウイルス感染が問題となる患者については随時、Tacの投与量を変更せずにMMFからEVRへ変更を行っている。今回、移植後1年以内にMMFからEVRに変更した19例のうち、3ヶ月、12ヶ月の定期生検を完了した11例の移植腎生検所見を検討した。
【結果】性別は男性6例、女性5例、年齢は52±15(SD)歳、EVRへの変更理由は、悪性腫瘍の既往7例、MMFの副作用2例(下痢、肝機能障害)、ウイルス感染2例(BKウイルス腎症、サイトメガロウイルス抗原血症)であった。変更日は移植後123(57−204)日であった。変更後、MMFの副作用とウイルス感染はともに治癒した。急性拒絶は全て定期生検で診断され、3ヶ月生検でGrade Iaの急性T細胞関連拒絶を1例に、12ヶ月生検でGrade Ibを1例に認めた(12ヶ月以内の急性拒絶発症率18%)。定期生検では光顕上、糸球体病変は認めなかったが、移植12ヶ月後に尿蛋白/尿クレアチニン比1.0以上の蛋白尿を3例に認めた。
【結論】MMFからEVRへの変更による3剤併用療法の短期の治療成績は良好であった。

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