新規導入エベロリムス症例におけるプロトコール生検結果に関する検討

大阪大学大学院 器官制御外科学(泌尿器科)
* 山中 和明、加藤 大悟、角田 洋一、阿部 豊文、今村 亮一、市丸 直嗣、野々村 祝夫
大阪大学 先端移植基盤医療学
高原 史郎
桜橋医誠会クリニック
京 昌弘
愛仁会 高槻病院 腎移植科
客野 宮治

【目的】近年、腎移植症例でエベロリムス(EVR)の使用は増加傾向にある。しかし、適切な使用方法は確立しておらず、長期使用成績、副作用や移植腎に及ぼす組織学的変化など、今後解明しなければならないことが多い。我々の施設では、従来の腎移植プロトコールに移植直後からEVRを加える5剤併用プロトコールで腎移植を施行してきた。今回我々はEVR新規導入症例のプロトコール生検により得られた移植腎病理結果の変遷について報告する。
【対象と方法】大阪大学医学部附属病院泌尿器科で2012年9月から2013年7月までにEVR、Tac、MMF、BXM、PSLの5剤併用にて新規導入するプロトコールを用いて腎移植を施行した8症例を対象とした。8症例のうち、移植2か月後に急性T細胞性拒絶反応(ATMR)を発症した1症例はプロトコール生検が施行されなかったため、プロトコール生検(3か月、1年)が施行された7症例の病理組織学的診断結果について、後ろ向きに検討した。
【結果】レシピエント(R)/ドナー(D)性別:男性5例、女性3例/男性3例、女性5例、R/D年齢(中央値):33歳 (23-54)/54歳(39-82)、全症例が血液型適合移植、HLAミスマッチ(中央値):2.5(0-5)、全症例でLCT・FCM陰性であった。3カ月プロトコール生検結果は、normal findings:3例、Borderline change(BC):2例、ATMRTa:2例であった。3カ月プロトコール生検時のTacトラフ値は4.0ng/ml(±0.84)、EVRトラフ値は3.9ng/ml(±1.3)であった。Tac/EVRのトラフ値と拒絶反応発症の相関関係を調べたが、いずれも強い相関は示さなかった。1年後プロトコール生検が施行された5例の病理組織結果を含めても、腎毒性の所見は認めず、またEVRとの関連を疑う新たな所見も認めなかった。現在まで7症例の腎機能はいずれも安定している。
 移植後540mg/dayまで尿蛋白の増加した症例があったが、1年プロトコール生検の病理学的所見は、光顕・電顕でも特記すべき所見を認めなかった。その後、ARBの投与で尿蛋白は減少傾向となった。
【結語】新規導入EVR腎移植症例の3か月プロトコール生検でBC症例を含めsubclinical rejectionの所見を4症例で認めた。しかし、CNI腎毒性の所見を認めず、現在までいずれの症例も腎機能は安定している。

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