移植後超急性の拒絶反応を認め、腎生検にて急性抗体関連型拒絶反応と診断した一例

戸田中央総合病院 腎臓内科
* 田中 陽一郎、児玉 美緒、佐藤 啓太郎、江泉 仁人、井野 純
戸田中央総合病院 泌尿器科
神澤 太一、北嶋 将之、 清水 朋一

 生体腎移植術後2日の早期に乏尿、腎機能低下を認め、移植後第6病日の移植腎生検にて急性抗体関連型拒絶反応(acute antibody−mediated rejection)と診断した一例を経験した。
 症例は57歳女性。妊娠歴あり。多発性嚢胞腎のため2013年8月から透析導入となっていた。2014年10月25日夫から生体腎移植を施行した。A→ABと血液型は不一致、HLAタイピングでは5座ミスマッチであった。クロスマッチ検査はCDC、FCXM共に陰性であった。抗ドナー抗体はLAB ScreenにHLA DR8抗体が陽性であった。免疫抑制剤はtacrolimus、mycophenolate mofetil、methylprednisolone、basiliximab、rituximab200mgの5剤を用いた。術後の尿流出は良好であり、超音波検査上も血流は保たれていたが、移植後第2病日に尿量減少を認め、Cre 3.63mg/dl、LDH 218U/l、Plt 11.8万/μlと異常値を呈していた。また腎動脈エコーにおいても拡張期における血流不良を認めていた。以上の所見から超急性の拒絶反応と考え、ステロイドパルス500mg/日、血漿交換、IVIG(計30g)を施行した。第6病日には移植腎生検を施行、結果はPTCにC4dの沈着、v程度の内膜炎、軽度の糸球体炎を認め、急性抗体関連型拒絶反応と診断した。その後血液透析も併用し治療継続、次第に尿流出は増え、腎機能は改善した。
 今回症例は妊娠から抗ドナー抗体陽性となり、同抗体が急性抗体関連型拒絶反応を引き起こしたと考えられた。経過および病理所見を呈示する。

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