間質出血を認め、急性抗体関連型拒絶反応が疑われた一例

明石医療センター 腎臓内科
* 北村 謙
神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科学
吉川 美喜子、中井 健太郎、西 慎一
神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学
石村 武志、藤澤 正人
神戸大学大学院医学部附属病院 病理部・病理診断科
原 重雄

 症例は64歳男性(O型Rh+)。腎硬化症による腎機能低下の進行にて59歳時に腹膜透析導入となり、64歳時にA型Rhの妻をドナーとするABO不適合生体腎移植術を施行した。クロスマッチはT-cell、B-cell共に陰性、HLAは3mismatchであった。術前の減感作療法は、リツキシマブ(RTX)(180mg/body)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)1000mg、タクロリムス(Tac)6mg、メチルプレドニゾロン(MP)16mg、バシリキシマブ(BLX)20mgに加え、抗体除去療法として二重濾過血漿交換3回、単純血漿交換1回を施行し、抗A抗体価IgG256倍から4倍への減少を確認した。術後7日目に血清Cre1.2mg/dlまで改善を認めた後に術後10日目Cre2.1mg/dl(尿中赤血球1-4/HPF、尿蛋白0.1g/gCr)、抗A抗体IgG128倍と上昇あり移植腎生検を施行した。
 光顕所見にて、皮質深部〜髄質領域において間質の浮腫及び出血を認め、peritubular capillary内に単核球あるいは多核白血球浸潤が少数認められた(ptc1)。尿細管炎(t0)及び動脈内膜炎(v0)は認めず、ごく軽度の糸球体炎を認めた(g1)。蛍光所見ではC4dスコア3であった。また血栓は血管内に認めなかった。
 組織学的に急性抗体関連型拒絶(acute/activeAMAR)も疑い、MPパルス療法(500mg/日、3日間)、MMFを1500mgに増量、グスペリムス塩酸塩(DSG)を併用、単純血漿交換を計3回施行し、術後40日目血清Cre1.4mg/dlにて退院となった。
 皮質深部から髄質領域に間質出血を認めた。Banff2013の基準に照らし合わせても組織学的にはacute/activeAMARとはならないが、間質出血はAMARを疑わせる所見である。本例の組織所見と臨床所見をどのように考えるのか問題であり提示した。


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