移植後早期に診断され7年後に血液透析再導入となった難治性巣状糸球体 硬化症の1例

東京女子医科大学病院 第四内科
* 海上 耕平、新田 孝作
東京女子医科大学病院 病理診断科
川西 邦夫、藤井 晶子、金綱 友木子、 長嶋 洋治
東京女子医科大学病院 第二病理学
本田 一穂
東京女子医科大学病院 腎センター病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学病院 泌尿器科
神澤 太一、 土岐 大介、奥見 雅由、清水 朋一、野崎 大司、尾本 和也、石田 英樹、田邉 一成
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹

 症例は40歳男性。原疾患不明の慢性腎臓病で32歳時に血液透析が導入された。33歳時に母をドナーとする血液型適合生体腎移植を施行した。術後血清Cr 1.5−1.8mg/dLで経過していたが、移植後2ヶ月目に尿蛋白3.4g/日を呈し、移植腎生検で巣状糸球体硬化症(FSGS)と診断した。計3回の二重膜濾過血漿交換法(DFPP)の施行により尿蛋白は0.3−0.5g/日と不完全寛解I型に達した。移植後7ヶ月目の移植腎生検ではFSGS病変は認めなかった。移植後39ヶ月目に尿蛋白1.3g/日と増悪あり、移植腎生検を施行したところ、FSGS病変に加え、間質の線維化と尿細管萎縮(IF/TA、Banff 2007年分類でci1、ct1)を認めた。リツキシマブ300mgの投与と血漿交換(PE)を計3回施行後、尿蛋白は0.5g/日程度に改善したが、移植後48ヶ月目に尿蛋白1.0g/日と再増悪を認めたため、リツキシマブ200mgを投与し、以後、2−3ヶ月毎にPEを試行した(計42回)。次第に治療抵抗性となり、移植腎機能は移植後57ヶ月以降Cr 2.0mg/dL台となり、徐々に増悪傾向となった。移植後83ヶ月目には尿蛋白4.4g/日となり、移植腎機能はCr 5.61mg/dLまで増悪した。移植腎生検ではFSGS病変に加えて、IF/TAの著明な進行(ci3、ct3)を認めた。移植後87ヶ月目に移植腎機能廃絶により血液透析再導入となった。以上、本症は移植後早期にFSGSと診断後、PEやリツキシマブを含む治療により一時は不完全寛解を得るも、治療抵抗性となり移植後約7年で血液透析再導入となった臨床経過とともに、移植腎生検により、難治性FSGSの進展を組織学的に観察できた貴重な1例と考えられたため、文献的考察を加え報告する。


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