Granular swollen epithelial cell(GSEC)は移植腎グラフト老化の指標と なりうるか?

神戸大学医学部附属病院 病理診断科
* 原 重雄、伊藤 智雄
神戸大学医学部附属病院 泌尿器科
石村 武志、藤澤 正人

【背景】Granular swollen epithelial cel(l GSEC)はミトコンドリア異常症においてしばしば観察され、多くの場合は髄質集合管の腫大した尿細管上皮細胞として認識される(Am J Surg Pathol 2010)。GSECは中年〜高齢者の固有腎生検検体にも時に観察され、加齢変化の関与が示唆されている。移植腎グラフトの老化過程ではp16やp21の発現がひとつのマーカーとして報告されているが(Curr Opin Nephrol Hypertens 2005)、GSECが移植腎グラフトの老化を示唆する所見の妥当性は検証されていない。
【方法】対象は、2009年4月〜2015年4月に神戸大学医学部附属病院病理診断科において診断された移植腎生検検体416例、比較対照は同時期に提出された固有腎生検検体508例であり、両群についてGSECの頻度を比較検討した。
【結果】GSECは移植腎、固有腎それぞれ7.9%(33/416例)、8.5%(43/508例)に認められた(p=0.77)。GSECが認められたprotocolもしくはfor-cause生検での内訳は、著変なし(n=9)、IF/TA(n=6)、カルシニューリン阻害剤による慢性細血管障害(n=5)、抗体関連型拒絶反応もしくは治療後状態(n=3)、急性T細胞性拒絶反応(n=1)、その他(n=3)であった。移植腎症例のGSEC分布は33例中30例が髄質集合管であり、3例が皮質髄放線であった。
Bowman嚢上皮やpodocyteにはGSECは認められなかった。GSECの頻度を移植後期間別に検討すると、@移植時、A<1年、B1-3年、C>3年について、10.4%、11.4%、12.9%、13.5%であった(p=0.64)。
【結論】本検討ではGSECは固有腎と同程度の頻度で認められ、移植後経過期間との相関はみられなかったが、長期経過(>10年)した移植後生着臓器ではテロメア短縮が促進するという報告もあり(Transplant Immunol 2014)、長期生着例での検討が必要と推察される。


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