腎生検所見の診断・治療に難渋した心停止献腎移植の一例

国立病院機構 米子医療センター 外科
* 杉谷 篤、奈賀 卓司、久光 和則、山本 修、谷口 健次郎、吉田 春彦、M副 隆一
国立病院機構 米子医療センター 泌尿器科、国立病院機構 米子医療センター 病理
高橋 千寛、小林 直人
国立病院機構 米子医療センター 代謝内科
木村 真理

 県内で12年ぶりとなる心停止下献腎移植を施行した。ドナーは30代男性、168cm、55kg、死因はくも膜下出血、心停止4回の既往後に両腎一塊として摘出した。温阻血時間15分、摘出時間22分で潅流状態は良好であった。摘出前に高用量の昇圧剤が必要で、尿量は減少しており、入院時Cr0.63mg/dl、摘出時Cr5.95mg/dlであった。
 レシピエントは23歳男性。ドナー左腎を、過去の腹膜透析時の感染を避けて左腸骨窩に移植した。HLA検査は3Ag mismatchで、DCM、FCXMともに陰性であった。免疫抑制は、Simulect、Tacrolimus、MMF、Steroidの4剤で導入することにし、術前にTacrolimus 4mg、MMF 1000mg、SM 8mgの内服をした。再灌流後、少量の初尿が見られた。手術時間は2時間41分、総虚血時間は16時間56分であった。
 0Hr生検の組織像はほぼ正常であった。術後、維持透析を施行しながら尿量流出とエコーでの血流チェックをしたが、7PODに血流が低下し、プロトコール生検を施行した。糸球体、尿細管に壊死、フィブリン血栓、好中球浸潤がみられ、急性抗体性拒絶と判断して直ちに、ステロイドパルス、血漿交換、リツキサン投与、γグロブリン投与を行った。治療に反応して血尿が出始め、次第に増加して10PODに透析を離脱した。その後の生検2回では拒絶の所見は改善し、40PODに軽快退院した。現在血清Cr1.2mg/dlと良好である。7POD生検のC4d染色は陰性、この時の保存血清ではFlowPRA陰性であった。
 後日、病理組織標本の読影を専門医に依頼したところ、7PODの生検は、拒絶反応を示唆する所見はなく、近位尿細管に空胞変性が目立つ。14PODの生検では小葉間動脈の内膜下に高度な浮腫性病変や内膜肥厚が目立ち、特殊な病態でCNIの高度な腎毒性(血管毒性)という診断をいただいた。Tacrolimus血中濃度は、手術翌日がトラフ4.6ng/mlのため、DIVを併用して、20.4、14.1、17.6、11.1と推移し、経口のみに切り替えて7〜8ng/mlを維持していた。生検組織像、血中抗体と臨床経過が解離して、診断、治療方針に悩んだので、供覧して意見を頂戴したい。


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