腎移植後非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)に対しeculizumabを投与し奏効した2例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 池田 敬至、奥見 雅由、神澤 太一、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学 第四内科
海上 耕平
東京女子医科大学 病理診断科
川西 邦夫、澤田 杏理

【症例1】68歳男性。原疾患不明の末期腎不全に対し2009年血液透析を導入した。2014年8月DFPPとrituximabによる術前脱感作を行い、tacrolimus MMF steroid basiliximabによる免疫抑制導入により、妻をドナーとする血液型不適合生体腎移植術施行した。術中血流再灌流後も尿流出なく、再灌流5時間後に開放移植腎生検施行した。病理組織学的に糸球体係蹄腔内に新鮮なフィブリン血栓を多数認め、糸球体内皮の腫大、変性を認め、急性血栓性微小血管障害(TMA)の所見であった。溶血性貧血および血小板減少を認め、種々検査にて非典型的溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome: aHUS)と診断した。術後より免疫グロブリン大量療法(IVIg)と血漿交換(PEX)、ステロイドパルス療法施行し、術後6日目及び13日目に各eculizumab600mg投与した。eculizumab投与翌日より移植腎血流の著明な改善認め、尿量は漸増し透析を離脱した。術後21日目に施行したフォローアップ移植腎生検では活動性のTMAの所見は消失していた。
【症例2】27歳女性。ループス腎炎による末期腎不全のため、2011年血液透析導入を導入した。2014年DFPPとrituximabによる術前脱感作を行い、tacrolimus MMF steroid basiliximabによる免疫抑制導入により、父をドナーとする血液型不適合生体腎移植術施行した。術直後は尿流出認めていたが、術翌日より乏尿となり、溶血性貧血および血小板減少を認め、種々の検査によりaHUSと診断した。術翌日よりIVIg、血漿交換、ステロイドパルス療法施行し、術後3、10、17、24日目に各eculizumab900mg投与した。術後12日目に施行した移植腎生検では、数個の糸球体で分節状に係蹄壁の二重化と内皮細胞の腫大を認め、TMAの治療後の所見として矛盾しなかった。
eculizumab投与後より徐々に腎機能の改善と尿量の増加を認め、透析離脱、退院となった。術後3ヶ月目のフォローアップ移植腎生検では、糸球体係蹄壁の二重化像は認めなかった。


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