長期移植腎におけるDNA損傷と糸球体線維化の関連性

金沢医科大学
松井 佑樹、岡田 圭一郎、久保 幸美、中山 佳苗、向井 清孝、大串 勇気、正島 季代、林 憲史、井村 淳子、藤本 圭司、足立 浩樹、山谷 秀喜、横山 仁

【目的】移植腎におけるDNA損傷に関して慢性移植腎拒絶等が原因として報告されているが、糸球体線維化との関連性は明らかではなく、今回、この点を検討した。
【方法】移植腎生検35例(男22例、生体腎31例、移植時レシピエント年齢18〜51歳、移植時ドナー年齢17〜72歳、観察期間:移植後1ヶ月〜36.9年)を対象とした。糸球体DNA損傷に関して、抗γH2AX抗体を用いた免疫染色の陽性面積率を定量化した。また、糸球体線維化は抗膠原線維(COL)III、IV、VI型抗体を用いて検討した。
【結果】γH2AX陽性面積率は移植後年数およびCOLVI型と正の相関を示した(それぞれr=0.691、0.439、p<0.01)。
また、COLVI型は係蹄基底膜内皮下およびメサンギウム領域に集積し、移植後年数と正相関を示した(r=0.760、p<0.01)が、COLIII型およびIV型は有意ではなかった。γH2AXおよびCOLVI型陽性面積率への影響因子を検討した結果、移植後年数が最も重要な因子であった(それぞれβ値=0.700、p<0.001、β値=0.699、p<0.001)。
【結論】長期移植腎において、糸球体にDNA損傷が生じることにより、COLVI型が糸球体係蹄およびメサンギウムへ集積し、不可逆的な糸球体線維化を生じる可能性が示唆された。


戻 る  ページの先頭