サイトメガロウイルスとBKポリオーマウイルスの同時感染により早期に移植腎機能が低下した生体腎移植の一例

国立病院機構 岡山医療センター 外科
* 藤原 拓造、照田 翔馬、津高 慎平、豊岡 晃輔
国立病院機構 岡山医療センター 腎臓内科
太田 康介
国立病院機構 岡山医療センター 臨床検査科
神農 陽子

 症例は50歳代女性。原疾患はIgA腎症でドナーは配偶者。ABO血液型不適合で、フロークロスマッチはT, B細胞とも陽性、フローPRAはClassT陽性、抗サイトメガロウイルス(CMV)抗体はDR-であった。減感作療法の後2014年1月、生体腎移植術を施行。移植後83日目にCMV感染を発症、Valganciclovirを投与した。その後血清クレアチニン(Cre)値は微増傾向で、202日目(Cre 2.02mg/dl)の生検で、比較的広範囲に単核球浸潤を認め、ステロイドパルスを行った。十分な効果なく、241日目(Cre 3.07)サイモグロブリンを投与したが、著明な汎発性血球減少症を発症、CMVアンチゲネミア強陽性(max. 905)となり、投与を中止、免疫抑制剤も減量、変更した。Valganciclovirの投与は継続したが効果なく、遺伝子解析でganciclovir耐性が判明し投与は中止した。腎機能の改善はなく、268日目の生検では中等度の細胞浸潤があり、SV40 large T抗原陽性で、かつ個数は少ないものの抗CMV抗体も陽性であった。尿中Decoy細胞、血中BKウイルス(BKV)PCR陽性で、更に免疫抑制剤を減量した。335日目よりアンチゲネミアが10以下となり、尿中のDecoy細胞数も減少したが、血清Cre値の上昇(max. 7.66)は持続、357日目の生検所見では広範に高度の単核球浸潤を認め、SV40抗原は陰性化していた。ステロイドパルス療法で血清Cre値はやや低下したが、その後も5mg/dl台で推移している。
 BKウイルスとCMVが同時期に発症する例は比較的稀であり、本例は治療に難渋し、早期に低腎機能となっている。本例の病理所見、臨床経過を提示したい。


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