移植腎にde novoに発症したPGNMIDの1例

市立札幌病院 病理診断科
* 辻 隆裕、石井 保志、秋元 真祐子、柳内 充、深澤 雄一郎
奈良県立医科大学 病理診断学講座
伊丹 弘恵
札幌北楡病院 腎臓移植外科・泌尿器科
三浦 正義

 症例は40歳代男性。30歳代前半に慢性糸球体腎炎疑いで腎生検され、FSGSと診断された。腎生検後約5年で血液透析導入となり、約3年間の透析を経て、40歳代前半に血縁者をドナーとした生体腎移植が行われた。移植後早期に急性T細胞性拒絶のエピソードがあり抗拒絶療法を行った後、移植腎機能は安定していた。6ヶ月、1年生検では糸球体に異常はなかった。2年生検では意義不明なparamesangial deposits(pmd)がみられ、3年生検ではメサンギウム領域にC1qの沈着がみられた。4年生検ではpmdのほか、蛍光法でIgG、C3、C1q、κ鎖の沈着がみられ、そのときの検査で尿蛋白とsCr上昇が判明した。4年1ヶ月に再生検したところ、糸球体にメサンギウム基質増生、複数のpmdがみられ、蛍光法でIgG1κの沈着が確認され、depositsは電顕でimmune complex typeであったことからProliferative glomerulonephritis with monoclonal IgG deposits(PGNMID)の診断となった。その後の精査でEBV-DNA高値や遊離κ鎖高値が判明し、臨床的にはPTLDの存在が疑われた。以上の経過から移植腎にdenovoに発症したIgG1κ型PGNMIDと考えられた。プロトコル生検でpmdやC1q沈着がPGNMID発症に先行して認められており貴重な一例と考える。文献的考察を交えて報告する。


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