移植後IgA腎症の再発におけるエベロリムスの影響

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 和田 吉生、福澤 信之、原田 浩
市立札幌病院 病理診断科
深澤 雄一郎

【目的】IgA腎症による末期腎不全で腎移植を行った症例に対して、エベロリムスがIgA腎症・IgA沈着症再発にどのような影響を与えるか明らかにする。
【方法】2010年1月から2014年8月までに当科で腎移植を施行した症例のうち、原疾患がIgA腎症の50例を、エベロリムス投与群24例と非投与群26例に分けて、検査結果並びに病理組織像を検討した。
【結果】エベロリムス投与群、非投与群とも移植時の平均年齢は46.4歳であった。男女比はエベロリムス投与群で21:3、非投与群で14:12であった。移植後の顕微鏡的血尿の頻度には有意差を認めなかった。尿中蛋白量(g/gCr)は、エベロリムス投与群で移植直後0.42、移植3ヵ月後0.31、移植6ヵ月後0.27、移植12ヵ月後0.30、非投与群でそれぞれ0.18、0.12、0.14、0.17であり、非投与群で有意に少なかった(p=0.0089)。IgA腎症の再発はエベロリムス投与群で1例、非投与群で3例あり、いずれも扁桃摘出術及びステロイドパルス療法が行われていた。IgA沈着症は軽微なものも含めると両群のほぼ全例に認められた。エベロリムス投与群でgrade1相当のIF/TAを2例認めたが、これらはいずれもABO型不適合移植であった。
【結論】エベロリムス投与はIgA腎症の再発には影響を与えないものと考えられた。


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