紫斑病性腎炎再発に対し扁摘ステロイドパルスが奏功した1例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 山川 貴史、山本 泉、小松嵜 陽、新倉 崇仁、岡林 佑典、古谷 麻衣子、勝俣 陽貴、眞船 華、勝馬 愛、中田 泰之、小林 賛光、丹野 有道、大城戸 一郎、坪井 伸夫、横尾 隆
国立病院機構 千葉東病院 内科
山川 貴史
東京慈恵会医科大学 泌尿器科
小池 祐介、三木 淳、山田 裕紀
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は29歳女性。2000年8月(14歳)に両下腿紫斑および腹痛でアレルギー 性紫斑病を発症。一旦自然軽快したが、同年11月に再燃し、12月26日に腎生検にて、紫斑病性腎炎【ISKDC Grade IIIa 細胞性半月体1個 線維細胞性半月体2個:半月体形成率14%(3/21)】と診断。ステロイド、ミゾリビン、シクロスポリンおよび血漿交換による治療に抵抗性を認めた。2007年6月(21歳)血液透析導入となり、2008年4月(22歳)実母をドナーとする血液型適合不一致(O→A)、HLA 2 locus mismatchの生体腎移植を施行した。術後経過は良好で、腎機能S-Cr1.0mg/dl前後、尿蛋白0.1g/day程度を推移した。2010年10月(移植後2年2ヵ月)にS-Cr1.0mg/dl、蛋白尿 1.34g/dayと蛋白 尿増加が認められ、エピソード腎生検を施行したところ、メサンギウム基質増加、メサンギウム細胞増生に加えて、糸球体係蹄内だけでなく、係蹄外にも細胞増生が認められ、一部の糸球体係蹄にフィブリノイド壊死を認めた。IgAは巣状分節性にメサンギウム域の沈着を示し、電顕ではメサンギウム域および傍メサンギウム域に高電子密度沈着物を認め、紫斑病性腎炎の再発と診断した。短期間(2年2ヵ月)の再発と病理所見の活動性、nativeでの治療抵抗性の経過を考慮し、通常のステロイドパルス療法だけでは効果が乏しい可能性が高いと考え、nativeで報告のある扁桃摘出術を含めたステロイドパルス治療に踏み切った。2011年2月に扁桃摘出術を施行、ステロイドパルス療法を3回(2011年3、5、7月)施行した。その後、腎機能はS-Cr1.2mg/dl前後で経過し、蛋白尿は約半年後に完全寛解した。6年目のプロトコール生検で、明らかな拒絶反応を認めず、紫斑病性腎炎の活動性も認めなかった。本症例は扁桃摘出術とステロイドパルス療法が再発性紫斑病性腎炎に奏功した極めて示唆に富む症例であり、文献的考察を含めて報告する。


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