生体腎移植1年7か月後に間質出血を認めるもDSA陰性であった一例

長崎大学病院 血液浄化療法部
* 北村 峰昭、錦戸 雅春
長崎大学病院 腎臓内科
北村 峰昭、澤 未来、川口 祐輝、浦松 正、西野 友哉
長崎大学病院 腎泌尿器病態学
岩田 隆寿、望月 保志、錦戸 雅春、酒井 英樹
神戸大学医学部附属病院 病理診断科
原 重雄

 症例は53歳男性(AB型Rh+)。糖尿病性腎症にて45歳時に血液透析導入となり、51歳時に妻(O型Rh+)をドナーとするABO不一致生体腎移植を施行した(HLA5ミスマッチ、CDC及びフローサイトメトリークロスマッチT-cell、B-cell共に陰性 HLA抗体スクリーニングClass I、Class IIともに陰性)。免疫抑制はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロンにて行った。術後CMV感染等を認めるも術後59日目に退院した(BestCr1.32mg/dl)。その後移植後3 ヶ月、7か月、11か月の3回にわたり急性拒絶反応を繰り返し、エピソード生検ではATMRもしくはBorderline Changeであった。入院にてステロイドパルス療法、サイモグロブリン、スパニジンにて加療し、最終的にCr2mg/dl程度にて外来にてフォローアップとなった。移植後1年6か月頃より再度Cr上昇傾向(3.02mg/dl)となり、急性拒絶反応を疑いエピソード生検を施行した。
 病理所見にて間質の炎症細胞の浸潤は軽度(i1)であったが、尿細管炎(t2)の所見がありこれまでと同様にBorderline Changeと考えられた。C4d染色は陰性であったがperitubular capillary内に5-10個の炎症細胞(ptc2)と、糸球体係蹄内に軽度の炎症細胞の浸潤(g1)、間質出血を諸所で認め、急性活動性の抗体関連拒絶が疑われた。しかしながらFlow PRAではClassI、ClassIIともに陰性であり、DSAは陰性と考えられた。また、BKウイルスなどの感染症も否定的であった。ステロイドパルス療法に加えてDFPP、ガンマグロブリン投与、リツキシマブ投与を行うも、Crの改善は2.38mg/dlにとどまった。
 間質出血は急性抗体関連拒絶を疑わせる所見とされているが、本症例の場合はBanff2013分類ではacute/activeAMARの診断には至らず、臨床経過からもやや否定的と考えられた。
 移植後1年7か月経過しDSA陰性かつC4d陰性での間質出血は珍しいと考えられたため症例提示をした。


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