Fabry病が疑われる母子間腎移植で14年間レシピエントの増悪なく経過観察している1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 小谷 桂子、奥見 雅由、神澤 太一、土岐 大介、尾本 和也、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学 腎臓内科
海上 耕平
東京女子医科大学 病理診断科
山本 智子、長嶋 洋治
東京女子医科大学 第二病理
川西 邦夫、本田 一穂

 症例は53歳男性。1970年代10歳代から顕微鏡的血尿と蛋白尿が出現し、40歳で原疾患不明による末期腎不全にて透析導入となった。40歳時(2001年)に母から生体腎移植を施行、0時間移植腎生検にてドナー腎に糸球体上皮細胞胞帯での空胞変性と尿細管上皮の泡沫化が散見されFabry病が疑われた。術後1か月の移植腎生検でも同様の所見であり、電顕では糸球体上皮細胞にMyeloid bodyが確認されFabry病所見を認めた。しかし、この時点でレシピエントはFabry病の確定診断には至らなかったため、酵素補充療法は施行されず外来にて定期検診とした。また、その後の定期的に施行した移植腎生検にてFabry病による腎病変の増悪は認められなかった。以降の外来定期検診中に、左固有腎に腎腫瘍を指摘され、2015年(移植後14年目)に左腎摘除術を施行した。病理組織所見として、左固有腎に泡沫様変性を認めた。本人への十分なインフォームド・コンセントの上で精査した結果、血漿α-ガラクトシダーゼA酵素活性の低値とα-ガラクトシダーゼA遺伝子における変異が認められFabry病腎型亜型の診断に至った。現在までに神経学的異常所見は認めず、心エコにて心機能は正常、脳MRAにて脳動脈にて異常所見は認められていない。腎移植時の移植腎生検にてドナー腎にFabry病所見が認められ、腎移植14年後にレシピエントもFabry病腎型亜型の診断に至った。本症例においては、Fabry病に対しては酵素補充療法をせず14年が経過しているが、腎機能・移植腎病理所見・心機能・神経学的に異常所は認めていない。


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