移植腎組織における尿細管上皮細胞HLA-DR発現と抗体関連型拒絶反応発症に関する検討
HLA-DR Expression in Tubular Epithelial Cells and the Development of Antibody-Meditated Rejection in Kidney Transplantation

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 勝俣 陽貴、中田 泰之、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、
勝馬 愛、眞船 華、小林 賛光、丹野 有道、大城戸 一郎、横尾 隆
厚木市立病院 内科
山本 裕康
東京女子医科大学 腎センター
堀田 茂
東京女子医科大学 泌尿器科
奥見 雅由、石田 英樹、田邊 一成

【背景】移植後新規ドナー特異抗体(de novo donor specific antibody: dnDSA)は全腎移植患者の約30%に出現し、非出現例に比して移植腎喪失率が高い。dnDSA出現の臨床的危険因子としてnon-adherenceやHLA-DRミスマッチ等が報告されているが、特に近年では細胞性拒絶(cellular rejection: CR)からdnDSA出現を経て、抗体関連型拒絶反応(Antibody mediated rejection: ABMR)へ進展することが示唆されている。形態学的にはCR時に尿細管上皮細胞にMHC-classⅡであるHLA-DRが高発現することが知られており、同抗原を介した免疫学的機序によりdnDSA出現やABMR発症に進展することが推測されるが、病理組織学的所見との関連性について検討した報告はない。
【目的】尿細管上皮細胞におけるHLA-DR抗原の発現と、その後のABMR発症の関連性を評価する。
【対象・方法】2005年1月から2009年12月に東京女子医科大学泌尿器科で行われた生体腎移植症例のうち、18歳未満と既存DSAを有する症例を除外した210人を対象とし、移植後6ヶ月以内の腎生検標本により、HLA-DR(蛍光抗体法)陽性群と陰性群に群分けした(陽性群96人、陰性群114人)。dnDSA出現率をFisher’s exact法で、ABMR発症率、移植腎廃絶率についてはKaplan-Meier法、log-rank 検定で解析した。
【結果】dnDSA classⅡの出現はHLA-DR陽性群と陰性群で同等(15.2% vs 18.7% , p=0.57)であったが、ABMR発症率はHLA-DR陽性群で有意に高かった(17.5% vs 5.2% , p=0.008)。さらにCRの有無で層別化するとCRを呈したのはHLA-DR陽性群で28人(28.6%)、陰性群で15人(13.2%)、その後ABMRを発症したのはそれぞれ8人(8.3%)と2人(1.8%)であり、HLA-DR陽性かつCRを呈した群で最もABMR発症率が高かった。移植腎喪失率についてはHLA-DR陽性群、陰性群での明らかな差はみられなかった。
【結論】腎移植後6ヶ月以内に組織学的に確認される尿細管上皮細胞におけるHLA-DR抗原の発現とABMR発症の関連が示唆された。

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