結節性糸球体病変を伴い移植後37年目にdeath with functioning graft(DWFG)に至った1例

金沢医科大学 腎臓内科
* 松井 佑樹、山崎 恵大、宮竹 敦彦、鶴山 祐子、向井 清孝、
沖野 一晃、大串 勇気、正島 季代、林 憲史、藤本 圭司、
足立 浩樹、山谷 秀喜、横山 仁

【症例】65歳、男性。原疾患不明で20歳時に血液透析導入、28歳時にHLA-no mismatchの姉をdonorとして生体腎移植が施行された。既往歴にC型肝炎抗体陽性とB型肝炎既感染があり、クリオグロブリン血症を指摘されていた。33歳時よりメチルプレドニゾロン8mg、ミゾリビン50mg内服による免疫抑制療法を継続していたが、65歳時に敗血症性ショックにより死去。献体を希望され、移植腎のみ光学顕微鏡的組織評価を行った。組織標本において、糸球体に糖尿病性腎症の特徴を有しない結節性病変を多数認めた。なお、64歳時(移植後36年目)の血清クレアチニン上昇時に実施したepisode biopsyでも同様に11個中3個に結節性病変を認めた。蛍光抗体法では糸球体基底膜においてfine linearにIgGの沈着を認めたが、尿細管基底膜にはIgGの沈着を認めなかった。電顕像において結節性病変部位に、細胞破砕物と線維化を含む基質の増加を示したが、高電子密度沈着や類器官構造は認めなかった。本例のHbA1cは5.1%、眼底にも糖尿病性網膜症は認められず、糖尿病性腎症の結節性病変とは考え難かった。また、高電子密度沈着物も認めず、軽鎖沈着症あるいはクリオグロブリンによる結節形成は否定的であった。
 以上、移植後37年目にDWFGに至った症例において、長期生着後移植腎として興味深い病理所見を認めたので文献的考察を含めて報告する。

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