移植後20年以上の長期移植腎生検において移植時ドナー年齢が尿細管間質病変の予測因子である
Kidney allograft histology in patients with transplantation vintage longer than 20 years; tremendous effects of donor age

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学
* 難波 倫子、猪阪 善隆
桜橋医誠会クリニック
京 昌弘
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学
濱野 高行
山口病理組織研究所
山口 裕
大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学
高原 史郎

【背景】近年、graft survivalの向上に伴い長期生着症例も年々増加しているものの、20年を超えたグラフトの病理組織像を検討した報告はほとんどない。移植時生検における間質線維化、尿細管萎縮、硬化糸球体数の割合といった因子がgraft survivalに関与することが報告されている。
【方法】2002年から2014年に施行した腎生検のうち、生検時移植後20年以上経過していた25生検(N=22)を対象とし、病理所見の特徴や生検時の臨床像との関連について検討を行った。病理所見像はBanff分類を用いてスコア化した。さらに、peritubular capirallaritis(ptc)、腎実質における浸潤細胞(ti)、カルシニューリン阻害剤による細動脈の硝子様変性(aah)についても、上記分類を用いた。生検前1年間のeGFR slopeは線形回帰を用いて算出した。
【結果】対象症例の移植後年数、腎生検時のレシピエントと移植時のドナーの年齢の中央値(IQR)はそれぞれ、23.0(21.5, 25.0)年、58.0(44.5, 61.0)歳、69(61, 76)歳であった。生検時のeGFRは32.6±18.0ml/min/1.73m2、蛋白尿は0.908±1.03g/dayであった。臨床的な生検理由は、Cr上昇14例(56%)が、蛋白尿精査8例(32%)、non-episode3例(12%)であった。Banff分類に基づく病理組織所見は、急性・活動性病変(t, i, g, v)は全例認めなかった。慢性病変(ci, ct, cg, cv)および、その他のスコア(ptc, ti, aah)の分布はFigure1に示す。ci, ct陽性(score≧1)のうち、score1がそれぞれの77%、95%を占めており、ほとんどの症例が尿細管間質病変は軽度であった。一方、FSGS病変、半月体形成、cg病変といった糸球体病変は41%に認められた。ROC解析を行ったところ、ci, ctおよびFSGS病変に関連する臨床的因子として移植時ドナー年齢の関与が明らかとなった(AUC=0.89, 0.86, and 0.86,respectively)(Table1)。続いてロジスティック回帰分析を行うと、移植時のドナー年齢は蛋白尿とは独立してci, ctおよびFSGS病変と関連していた[それぞれのオッズ比(95%CI)は 4.3(1.3-43.3), 4.9(1.4-54.0), 24.6(2.4-1755.3)]。ところが移植後年数はいかなる組織学的スコアとも関連しなかった。
【結論】移植後20年といった長期間経過した後も、移植後年数ではなく、移植時のドナー年齢が尿細管間質病変やFSGS病変の存在と関連していた。

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