東京女子医科大学泌尿器科における腎移植後急性血管型拒絶反応症例の臨床病理学的検討
Clinicopathological analysis of acute vascular rejection cases after kidney transplantation

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、石田 英樹、海上 耕平、奥見 雅由、田邉 一成
昭和大学医学部 顕微解剖学
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理診断科
小池 淳樹

【目的】急性血管型拒絶反応(AVR)は、Banff分類においてもともと主として急性T細胞関連拒絶反応(aTCMR)とされてきたが、近年急性抗体関連型拒絶反応(aAMR)にも組み込まれている。またisolated v-lesion(IVL)という概念も提唱されている。今回我々は当施設におけるAVR症例を臨床病理学的に検討した。
【方法】2010年1月から2016年4月までに東京女子医科大学泌尿器科において施行した移植腎生検においてAVR(Banff score: v≧1)を認めた33症例の33病理組織標本検体(BS)を対象とした。
【結果】移植腎生検は移植後平均127日で施行されていた。AVRは軽度(Banff score: v1)が25 BS(76%)、中等度(v2)が7 BS(21%)、高度(v3)が1 BS(3%)であった。
 間質への細胞浸潤(Banff score: i≧1)は27 BS(82%)に認め、尿細管炎(Banff score: t≧1)は19 BS(58%)、糸球体炎(Banff score: g≧1)は15 BS(45%)、傍尿細管毛細血管炎(Banff score: ptc≧1)は24 BS(73%)に認めた。間質の線維化と尿細管萎縮(interstitial fibrosis and tubular atrophy; IF/TA)は7 BS(21%)に認め、動脈内膜の線維性肥厚(Banff score: cv≧1)は4 BS(12%)に認めた。傍尿細管毛細血管へのC4d沈着は17 BS(52%)に認めた。
 病理組織診断としては、aTCMRが11BS(34%)、aAMRが8BS(24%)、aTCMRとaAMRの混合が8BS(24%)、IVLが6BS(18%)であった。ILVのうち2BSが移植後14日以内であったが後の4BSは移植後3カ月〜1年であった。
【結論】現在の免疫抑制下ではAVRは軽度のものが8割で、軽度〜中等度のものがほとんどであった。aTCMRのAVRが3割〜6割、aAMRのAVRが2〜5割と、AVRは依然として細胞性拒絶が関与するものと抗体関連拒絶が関与するものに分けられることがわかる。IVLが2割あり、IVLの解釈が依然として難しいと思われた。

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