生体腎移植後にEpstein-Barrウイルス高負荷量が持続し、尿細管萎縮/間質線維化が進行した小児の1例
Severe interstitial fibrosis and tubular atrophy in a renal allograft recipient with persistently high EB viral load例

東京女子医科大学 腎臓小児科
* 滝澤 慶一、石塚 喜世伸、富井 祐治、三浦 健一郎、浅野 達雄、
笹田 洋平、金子 直人、薮内 智朗、佐藤 泰征、多田 憲正、
神田 祥一郎、服部 元史
仙台赤十字病院 小児科
菅原 典子
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 病理検査室
川島 真由子、中山 英喜、堀田 茂
昭和大学医学部 解剖学講座 顕微解剖学部門
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理診断科
小池 淳樹
山口病理組織研究所
山口 裕

【背景】小児腎移植では成人と比し、移植後のEpstein-Barrウイルス(EBV)初感染が多く、免疫抑制薬の減量以外に有効な治療手段に乏しい。
【症例】両側低形成腎を原疾患とする現在9歳の男児。6歳時に父をドナーとする血液型不一致生体腎移植を施行した。移植前のリンパ球クロスマッチ、DSAは共に陰性であった。腎移植時、サイトメガロウイルス(CMV)とEBVはともにドナーは既感染、レシピエントは未感染であった。初期免疫抑制はバシリキシマブ、タクロリムス(Tac)、ミゾリビン、メチルプレドニゾロンで行い、移植2か月後からエベロリムス(EVR)を併用した。目標のトラフ血中濃度は、Tacは移植後6か月まで4-5 ng/ml、それ以降は3-4 ng/mlとし、EVRは3.0 ng/mlとした。
【経過】腎移植1ヶ月後にCMV初感染を認め、ガンシクロビルで加療した。移植2か月後に発熱および頚部リンパ節腫脹を認め、以降末梢血EBV高負荷量が持続し最大で3.8×104copies/μgDNAまで増加した。血清Cr値が漸増したため移植腎生検を計4回施行し、CD3陽性T細胞を主体とする胞体の明るい単核球浸潤を一部に伴う尿細管萎縮/間質線維化(IF/TA)を進行性に認め、4回目にはIF/TAは70%に及んだ。傍尿細管毛細血管炎は認めなかった。3回目の移植腎生検でEBER染色陽性細胞をわずかに認めた。T細胞性拒絶(TCMR)も否定できなかったが、EBV高負荷量であったため免疫抑制薬の目標血中濃度を維持する方針とした。移植1年後にTacをシクロスポリンに変更しトラフ血中濃度 30 ng/mlとしたところ、末梢血EBV量は徐々に8.6×102copies/μgDNAまで低下した。移植3年後の現在、eGFR 30 ml/min/1.73m2まで低下し、血清EBNAは陰性のままである。
【考察】本症例の移植腎機能低下の主因は、移植腎生検でEBERがわずかに陽性であったこと、胞体の明るい単核球浸潤があったことから、EBVによるものと考えている。しかし、移植後早期以外は表在リンパ節腫脹を認めなかったこと、浸潤細胞がT細胞主体であったことは非典型的と考えられ、またTCMRとの鑑別にも苦慮した。本症例の移植腎機能低下の診断と治療について、広く意見を伺いたい。

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