肉芽腫性間質性腎炎を発症した腎移植患者の1例
A case of kidney transplant patient with granulomatous interstitial nephritis

北海道大学病院 泌尿器科
* 広瀬 貴行、岩見 大基、佐々木 元、樋口 はるか、高田 祐輔、
篠原 信雄
北海道大学病院 病理診断科
畑中 佳奈子、岡田 宏美

 症例は52歳男性、糖尿病性腎不全にて47歳時に血液透析導入、5年の血液透析を経て母(74歳)をドナーに生体腎移植術を施行した(血液型適合、抗ドナー特異的抗体陰性)。免疫抑制剤はシクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン、バシリキシマブの4剤で導入した。移植後1時間腎生検にて持ち込みIgA腎症の所見を認めていたが、移植腎機能は順調に発現した。移植後14日目に創感染に対して、創洗浄・再縫合を要したが、Cr 1.22 mg/dlで腎機能は安定していた。移植後62日目にCr 2.74 mg/dlと腎機能増悪あり、移植腎生検を施行した。拒絶を疑う所見はないが、髄質には肉芽腫性炎症像が見られた。好酸球浸潤が目立っていたものの、感染を第一に考え各種病原体の検索を行った。尿細胞診でDecoy cell陽性だったが、移植腎生検のSV40T染色陰性、血中及び尿中BKウイルスのPCR陰性から、BKウイルス感染によるものは否定的で、CMV染色やEBER-ISH染色も陰性であった。PAS染色、Grocott染色もともに陰性であり、尿中/血中アデノウイルスPCRや尿中チールニールセン染色も陰性であった。視力低下、発疹、発熱、関節痛、呼吸苦などの症状は認めず、血清Ca値は正常であり、サイルコイドーシスは否定的であった。また、シクロスポリン血中濃度を測定すると高値であった。病原体は確認できなかったものの、何らかの感染に関連した肉芽腫性間質性腎炎と判断し、免疫抑制剤を減量した。その後腎機能は改善し、移植後135日目に再評価目的に腎生検を施行した(Cr 1.33 mg/dl)。拒絶を示唆する所見はなく、前回認められた肉芽腫性炎症は消失したものの、SV40T染色陽性であった。尿細胞診では引き続きDecoy cellが認められ、血中及び尿中PCRでもBKウイルスが陽性化した。BKウイルス腎症と診断し、さらに免疫抑制剤を減量し、エベロリムスを導入し、以後尿細胞診にてDecoy cellは消失し血中及び尿中BKウイルスも陰性化し、移植後279日の現在、移植腎機能はCr 1.42 mg/dlで安定している。腎移植後に肉芽腫性間質性腎炎を発症した1例について、文献的考察を加えて報告する。

スライド

戻 る  ページの先頭