糖尿病性腎症を有する同一ドナーから献腎移植を施行された2例
The cases of two recipients of kidneys from an identical deceased donor who had diabetic nephropathy

東京女子医科大学 泌尿器科
* 岡田 大吾、奥見 雅由、清水 朋一、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学 腎臓内科
海上 耕平
東京女子医科大学 腎臓小児科
菅原 典子、石塚 喜世伸、三浦 健一郎、服部 元史

 2015年1月60歳女性からの心停止下献腎移植術を施行。ドナーに糖尿病の既往があったが、治療歴等の詳細は不明であり、ドナー背景を十分に説明した上で当院にて両腎の献腎移植術を施行した。レシピエント1は58歳男性(透析歴:34年、原疾患:ネフローゼ症候群)、レシピエント2は15歳女性(透析歴:3年、原疾患:巣状糸球体硬化症)であり、共に免疫抑制導入はTac、MMF、MP、basiliximabにて免疫抑制導入を行った。0 hr移植腎生検ではnodular sclerosis、polar vasculosisを認め、高度の糖尿病性腎症を指摘された。レシピエント1は血清クレアチニン(sCr)2.1mg/dL、尿タンパク1 で術後19日に退院。術後4ヶ月目、1年2ヶ月目のプロトコール移植腎生検では、0 hr生検と同様の高度糖尿病性腎症の所見が残存していた。現在、sCr 1.7mg/dL前後、尿蛋白1 で推移。レシピエント2はsCr 1.8mg/dL、尿中蛋白・クレアチニン比(PCR)2.4で術後73日に退院。術後7ヶ月目にsCr 3.4mg/dLまで増悪したため、エピソード移植腎生検を施行。糖尿病性腎症を背景とした尿細管萎縮、間質線維化の増悪所見を認めた。現在、sCr 4.5mg/dL前後、尿中PCR 8台で推移。両症例とも病理組織学的には明らかな拒絶反応は認めていない。
 近年、糖尿病罹患率の増加に伴い、献腎ドナーも糖尿病に罹患している可能性もある。しかし、ドナー由来の糖尿病性腎症がレシピエントの術後経過にどのような影響を与えるかをまとめた報告は少ない。今回、われわれは糖尿病性腎症を有する同一ドナーから献腎移植2例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。

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