高尿酸血症が移植腎に及ぼす細動脈硝子化への影響
Serum Uric Acid and the Progression of Arteriolar Hyalinosis after Kidney Transplantation

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 中田 泰之、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、勝俣 陽貴、
眞船 華、勝馬 愛、小林 賛光、丹野 有道、大城戸 一郎、横尾 隆
厚木市立病院 内科
山本 裕康
東京女子医科大学 腎センター
堀田 茂
東京女子医科大学 泌尿器科
奥見 雅由、石田 英樹、田邊 一成

【背景】腎臓における細動脈硝子化はCKD進展と密接に関連する重要な病理学的所見である。一般的に、細動脈硝子化は、加齢、高血圧症、糖尿病により進展するが、移植腎においては、これらの因子に加え、CNI毒性が混在するため、重篤化しやすい。近年、高尿酸血症は細動脈硝子化を進展させることが指摘され、また、以前より、CNI 毒性が高尿酸血症下で促進されることが報告されている。以上のことから、腎移植レシピエントにおける高尿酸血症は、細動脈硝子化の発症に影響し、Interstitial fibrosis/tubular atrophy[IF/TA]を関連する可能性がある。
【目的】移植後高尿酸血症と細動脈硝子化、IF/TAの関連性を評価する。
【方法・対象】2005年1月から2009年12月に東京女子医科大学泌尿器科で行われた腎移植症例のうち、18歳未満、移植後HbA1c>6.5%、移植後2年未満しか腎生検を行われていない症例を除外基準とし126例が対象となった。病理所見の進展は、Banff scoreがベースラインより2以上増加したものと定義した。細動脈硝子化の進展、IF/TAの 進展と移植後血清尿酸値との関連性を単変量解析で評価した。血清尿酸値は、移植後2週間、1か月、3か月値を平均したものをベースライン尿酸値とし、病理所見をフォローアップできた期間までの1年毎の値を平均したものを経時的尿酸平均値とした。
【結果】単変量解析において、経時的尿酸平均値は、細動脈硝子化(Odds Ratio[OR]、1.56; p = 0.03; 95% confidence interval[CI]、1.04 to 2.34)とIF/TA(OR、1.91; p <0.01; 95% CI、1.25 to 2.93)のいずれの進展にも有意に関連した。一方でベースライン尿酸値は、IF/TAの進展には関連を認めたが(OR、1.38; p = 0.03; 95% CI、1.04 to 1.83)、細動脈硝子化の進展との関連性は見られなかった(OR、1.02; p = 0.86; 95% CI、0.78 to 1.34)。なお細動脈硝子化は、ドナー年齢(OR 1.09 p<0.01 95% CI 1.03-1.15)と強く関連したが、ベースラインの血圧値とは有意に関連しなかった(収縮期血圧:OR 1.02; p = 0.13; 95% CI、0.99-1.05。拡張期血圧:OR 1.03; p = 0.08; 95% CI、0.99-1.07)。
【結論】ベースラインの高尿酸血症は、IF/TAと関連し、また、経時的な高尿酸血症は、IF/TAおよび細動脈硝子化と有意な関連を認めた。したがって、移植後早期から、長期にわたる高尿酸血症の管理が重要である可能性が示唆された。

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