尿細管基底膜に単クローン性免疫グロブリン沈着を呈した腎移植患者10例の臨床病理学的検討
Tubular basement membrane with monoclonal IgG deposition of renal allograft

東京女子医科大学病院 第四内科
* 澤田 杏理、海上 耕平、新田 孝作
東京女子医科大学病院 病理診断科
澤田 杏理、川西 邦夫、長嶋 洋治
東京女子医科大学病院腎センター 病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学病院 第二病理学教室
種田 積子
戸田中央総合病院 泌尿器科
尾本 和也
東京女子医科大学病院 泌尿器科
清水 朋一、奥見 雅由、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学病院 腎臓外科
渕之上 昌平
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹
昭和大学 解剖学講座 顕微解剖学部門
本田 一穂
東京女子医科大学病院 腎小児科
服部 元史

【背景】尿細管基底膜への免疫グロブリン沈着は、ループス腎炎などの免疫複合体沈着型腎炎、薬剤性尿細管間質腎炎、MIDD、BKウイルス腎症などで報告されている。しかしその臨床病理学的意義については不明な点も多い。また移植腎においては、尿細管基底膜への単クローン性の免疫グロブリン沈着については過去に報告されていない。
【方法と対照】東京女子医科大学腎センター病理において、尿細管基底膜への単クローン性IgG沈着を認めた、腎移植症例9名について臨床病理的検討を行った。
【結果】症例は男性4例、女性6例。年齢は11 〜 61歳(平均年齢:43.5±15.6歳)、移植から生検までの日数は13〜6058日(平均日数:1352±1781日)であった。原疾患は、紫斑病性腎炎2例、IgA腎症2例、糖尿病性腎症1例、先天的尿路異常1例、他4例であった。沈着パターンは、IgG1κ7例、IgG2κ1例、IgG2λ1例、IgG3κ1例であり、全ての症例で糸球体には免疫グロブリン沈着を認めなかった。8例にC3の共染色を認めた。1例でIgA腎症、1例でtoxic tubulopathyの合併を認めた。また、1例は移植後18年で移植腎機能障害に至ったが、その他の症例は移植腎機能が保持されている。抗体関連型拒絶(2例)、T細胞関連型拒絶(1例)、両者の混合型(1例)の随伴を認めた。
間質の線維化と尿細管萎縮(IFTA)については、経過中に7例が中等度〜高度に進展した。
【まとめ】尿細管基底膜に限局した単クローン性免疫グロブリン沈着を呈する腎移植患者9例について臨床病理学的検討を行った。9例中6例では中等度〜高度のIFTAを認めた。電顕での形態的特徴や文献的考察を含めて報告する。

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