生体腎移植後に発症した血栓性血小板減少性紫斑病の1例

東京女子医科大学病院 腎臓内科
* 海上 耕平、澤田 杏理、新田 孝作
東京女子医科大学病院 泌尿器科
奥見 雅由、尾本 和也、清水 朋一、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学病院 病院病理部
川西 邦夫
聖マリアンナ医科大学 病理診断科
小池 淳樹

 症例は34歳女性。ループス腎炎を原疾患とする慢性腎不全に対して、母をドナーとした血液型適合生体腎移植術を施行した(免疫抑制剤導入;タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイド、リツキシマブ)。術後5日目に発熱あり、中心静脈カテーテル感染を疑い抜去した。術後7日に血清クレアチニン 3.49mg/dLまで低下したが、その後増悪した。また、LDH上昇及び血小板低下あり、拒絶反応その他を疑い、移植腎生検を施行、血栓性微小血管障害及び腎梗塞所見を認め、拒絶反応は認めなかった。腎機能に関して増悪があったため、術後9日より血液透析療法再開を検討したが、感情失禁など動揺性精神障害を認め、中止している。当初は拒絶反応を想定していたが、血小板減少、動揺性精神障害、発熱、腎障害から、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)も鑑別に挙がり、併せて血漿交換療法を開始した。以後、血小板は著明に改善し、また、血清クレアチニン及び尿素窒素も増悪なく推移した。このため、血漿交換療法の効果があると考えられ、術後25日まで計14回血漿交換療法を施行した。血栓性微小血管障害に関して、血漿交換開始前に施行したADAMTS13活性 0.5%未満、ADAMTS13インヒビター定量128.1BU/mL以上であったことが判明し、後天性TTPと診断した。血漿交換療法継続では腎機能増悪はないものの改善は乏しく(術後18日目 Cre 3.89mg/dLまで改善したが再度増悪)、また、新鮮凍結血漿輸血時のアレルギー症状出現あり、積極的な継続は難しい状況であった。治療抵抗性TTPであり、術後25日目にリツキシマブ 560mg(285mg/m2)投与1クールのみ施行、以後、血漿交換療法は施行しなかった。投与後、腎機能は緩やかに改善し、さらにADAMTS13活性 91.2%、ADAMTS13インヒビター定量<0.5BU/mLと改善を確認した。術後40日目に治療効果判定のため移植腎生検を施行、陳旧化血栓性微小血管障害の状態であった。これらよりTTP加療後の経過として合致していると考えられた。経過良好と判断し、術後41日目に退院した。

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