高度hyalinosis出現に対する原疾患糖尿病性腎症の与える影響
Severe arteriolar hyalinosis in allografts of diabetic kidney disease

国立病院機構千葉東病院 臨床病理診断部
* 山川 貴史、北村 博司
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
小林 賛光、山本 泉、川邊 万佑子、勝俣 陽貴、勝馬 愛、
中田 泰之、横尾 隆
国立病院機構千葉東病院 外科
青山 弘道、大月 和宣、圷 尚武、丸山 通広、長谷川 正行、
西郷 健一

【背景】腎移植後に進展するhyalinosisは、移植腎予後に影響する。腎移植患者では、加齢、高血圧、糖尿病、尿酸などに加え、カルシニューリン阻害薬(CNI)がhyalinosisの進展を促進することが知られている。特に糖尿病性腎症を原疾患とする腎移植患者では、糖尿病とCNI毒性の両方により高度hyalinosisをきたす可能性が考えられるが、その知見については十分に検討されていない。

【目的】高度hyalinosisの進展に関連する因子を検討する。

【方法・対象】2006年4月から2016年1月に千葉東病院で行われた生体腎移植症例で1年以上経過した移植腎生検が施行されている原疾患糖尿病性腎症33例および年齢、性別、移植時期をマッチングさせた原疾患非糖尿病性腎症の50例を追加した計83例を対象とした。病理所見は、間質線維化・尿細管萎縮(IFTA)、球状硬化糸球体、細動脈のhyalinosis、小葉間動脈の線維性内膜肥厚、縞状線維化、尿細管の微細空胞変性を評価した。高度hyalinosisをah aah≥3(Banff 2013)と定義し、その関連因子をCox hazard分析により検討した。その他の2群間比較はMann-Whitney U検定およびχ2乗検定で解析した。

【結果】移植時年齢49.7歳、男性81.9%、CNIの種類はCyA/Tac 47/32例であった。観察期間の中央値は4.56(1.22-10.3)年であり、移植腎廃絶3例、死亡0例であった。高度hyalinosisの割合は、移植後1年で9.6%、移植後2-4年で24.4%、5年以上で78.1%と有意に増加した。高度hyalinosisは、原疾患非糖尿病性腎症では50例中8例(16.0%)であったのに対して、原疾患糖尿病性腎症では33例中14例(42.4%)と有意に多かった(p=0.0076)。しかし、Cox hazard分析の結果では、「原疾患糖尿病腎症」「ドナー年齢」「CNIトラフ値」「高血圧」「高尿酸血症」はいずれも高度hyalinosisに有意に関連しなかった。

【結論】原疾患糖尿病性腎症は、非糖尿病群に比べ高度hyalinosisの割合が有意に多かったが、多変量解析では、有意な関連因子ではなかった。観察期間やプロトコル生検の有無が影響した可能性が考慮された。今後、さらなる症例数の追加や積極的なプロトコル生検実施により、高度hyalinosis出現に対する原疾患糖尿病性腎症の影響が明らかになると考えられる。

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