移植腎組織におけるリポフスチン沈着の臨床病理学的検討

東京女子医科大学病院 第四内科
* 川口 祐輝、小口 英世、板橋 淑裕、河村 毅、村松 真樹、
兵頭 洋二、高橋 雄介、二瓶 大、大橋 靖、濱崎 祐子、
宍戸 清一郎、酒井 謙
東京女子医科大学病院 病理診断科
山口 裕
東京女子医科大学病院腎センター 病理検査室
三上 哲夫
東京女子医科大学病院 第二病理学教室
根本 哲生、渋谷 和俊

【背景】リポフスチンは、細胞質内でライソゾームによって分解された遊離脂肪酸の残余物質である。HE染色標本では黄色〜黄褐色を呈し、肝細胞・神経細胞などの細胞内に微細な色素顆粒として現れ、老化の指標として考えられている。一方、腎臓では尿細管上皮細胞内にしばしばリポフスチン沈着を認めるものの、その意義について検証されていない。

【方法】2015・2016年に当院で行われた腎生検検体のうち、移植腎223例・固有腎90例を対象とし、リポフスチン沈着について比較検討した。

【結果】移植腎で135 / 223例にリポフスチン沈着を認め、沈着あり群がなし群に比して、有意に移植腎年齢(ドナー年齢+移植後年数)が高かった(p=0.04)。固有腎ではリポフスチン沈着を63 / 90例に認め、沈着あり群がなし群に比して、有意に固有腎年齢が高かった(p=0.02)。さらに、移植腎年齢と固有腎年齢がマッチした両群(n=83ずつ)でリポフスチン沈着率は、移植腎で60 / 83(72.3%)例、固有腎で59 / 83(71.2%)例と有意差がなかった。沈着の局在を検討したところ、近位尿細管曲部は移植腎で18例・固有腎で4例、近位尿細管直部は移植腎で17例・固有腎で26例、その他(遠位尿細管・ヘンレループ)は移植腎で25例・固有腎で29例であった。移植腎では固有腎に比して、有意に近位尿細管曲部へのリポフスチン沈着(Figure)を認めた(p=0.01)。

【結論】移植腎年齢および固有腎年齢は、リポフスチン沈着あり群がなし群に比して、有意に高かった。移植腎年齢と固有腎年齢をマッチさせた検討において、移植腎では固有腎に比べ、リポフスチン沈着率に差はなく、有意な近位尿細管曲部への沈着を認めた。今後、移植腎における近位尿細管曲部へのリポフスチンが沈着する背景因子について、さらに解析を追加する予定である。

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