妊娠出産後に抗HLA-DQ抗体をドナー特異的抗体とした抗体関連型拒絶反応を発症した一例

東京慈恵会医科大学附属病院
* 嵯峨崎 誠、中田 泰之、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、
勝俣 陽貴、眞船 華、勝馬 愛、小林 賛光、丹野 有道、横尾 隆
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は34歳女性。遺伝性腎炎と考えられる末期腎不全で、21歳時に血液透析導入を経たのちに、22歳時に実母をドナーとする血液型適合不一致生体腎移植を実施した(HLA 2 locus mismatch)。その後、移植腎機能は血清Cr1.0mg/dlで蛋白尿も500mg/day前後で落ち着いていた。移植後9年目に妊娠し、妊娠後期に高度の蛋白尿(5g/day)を伴う妊娠高血圧症となったことから、妊娠28週2日で分娩に至った。分娩後、蛋白尿は速やかに軽快し、血圧も正常化したが、血清Cr値が半年の経過で1.2mg/dlから1.6mg/dlと漸増したため、エピソード腎生検を実施した。結果、糸球体炎はみられなかったものの、中等度の傍尿細管毛細血管炎が傍尿細管毛細血管基底膜多層化を伴って認められ、C4dは陽性であった。ドナー特異的抗体(Donor Specific Antibody: DSA)を検索したところ、抗HLA-DQ5抗体(MFI; 12708)がDSAと判明し、慢性抗体関連型拒絶反応の診断に至った。血漿交換、IVIG、リツキシマブによる治療を行い、現在、血清Cr 1.5mg/dl前後で安定している。本例は、妊娠出産を経たのちに、抗HLA-DQ抗体をドナー特異的抗体とした抗体関連型拒絶反応を、移植後11年目に生じた症例であった。移植後の妊娠出産に伴うde novo DSAの発現についての報告は少なく、不明な点も多いため、示唆に富む一例と考え報告とする。

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