移植後9年目で蛋白尿の増加を認め、原疾患による糖尿病性腎症の関与が疑われた1例

金沢医科大学
* 松井 佑樹、熊野 奨、加賀谷 侑、原口 貴敏、鶴山 祐子、
岡田 圭一郎、中山 佳苗、大串 勇気、向井 清孝、林 憲史、
藤本 圭司、足立 浩樹、中川 卓、山谷 秀喜、横山 仁

 症例は生体腎移植後10年目の38歳女性。
 15歳時にT型糖尿病と診断されインスリン療法開始。26歳時に糖尿病性腎症による末期腎不全で血液透析導入となり、28歳時に母親をドナーとしたABO一致生体腎移植術を施行した。免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、バシリキシマブの4剤で開始し、移植術直後は特に問題なくsCr0.9mg/dlで退院。移植後1年半で血清クレアチニンの上昇を認めためepisode biopsy施行し、生検の結果からBKウイルス腎症が疑われ免疫抑制剤減量となった。その後、移植後3年目、5年目、7年目、10年目でprotocol biopsy施行。移植後緩やかに腎機能は悪化しており、現在sCr2mg/dl前後の状態である。また、移植後9年目頃より蛋白尿定量検査で1g・g/Crを越えるようになった。経時的に移植腎生検標本を観察し、蛋白尿の漏出の原因は慢性拒絶反応よりも、原疾患である糖尿病由来である可能性を考慮した。電子顕微鏡所見を含め、移植後蛋白尿増加に関して文献的考察を加えて報告する。

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