原疾患不明の腎不全に対する腎移植後に腎機能増悪をきたした一例
A case of acute allograft dysfunction after kidney transplant from ESRD patient of unknown origin

神戸大学医学部附属病院 腎臓内科
* 齊藤 慶、吉川 美喜子、西 慎一
神戸大学医学部附属病院 腎泌尿器科
石村 武志
神戸市立医療センター中央市民病院 病理診断科
原 重雄

【症例】54歳女性(AB型)

【経過】X-16年に腎機能低下に対して腎生検が施行され、膜性増殖性糸球体腎炎(詳細不明)に対してPSL、MZRによる治療が行われた。同時期に2型糖尿病、高血圧を指摘された。徐々に腎機能低下が進行し、X-2年に腹膜透析導入後、生体腎移植希望でX-2年に当院紹介受診となった。初診時に低補体血症、クリオグロブリン弱陽性であったがHCV抗体は陰性であった。夫(56歳A型)をドナーとする生体腎移植が施行された。移植時の腎生検では軽度の尿細管萎縮を認める程度であり、蛍光抗体法でも免疫グロブリンや補体の沈着は認めなかった。
 移植後の腎機能は術後20日頃まで血清Cre1.0mg/dl前後で尿蛋白も見られなかったが血圧、血糖値のコントロールは不良であった。腎機能は徐々に悪化し、血清Cre 1.3-1.5mg/dl台と増悪を認め、尿蛋白も一時ネフローゼレベルまで増加した。低補体血症、クリオグロブリン陽性も持続しており、急性拒絶やクリオグロブリン腎症などの再発を疑い移植3ヶ月に腎生検を行った。管内細胞増多、糸球体係蹄壁二重化、尿細管上皮の空胞変性などの所見を認めたが、動脈内膜炎(v0)や尿細管間質腎炎(t0)を示唆する所見はなく、蛍光抗体法では明らかな免疫グロブリン沈着やPTCのC4d沈着は見られなかった。電子顕微鏡は著明なdense depositの沈着は認めなかったが、糸球体内皮障害と細動脈の内膜下浮腫状所見が高度であった。低補体血症、クリオグロブリン陽性は持続したが蛋白尿はARBのみで減少した。

【結語】移植後に原因不明の腎機能増悪と高度血管内皮障害をきたした症例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する。

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