移植後3ヵ月で再発した非定型的膜性増殖性糸球体腎炎の一症例
Recurrence of unusual MPGN within 3 months after renal transplantation

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学
* 難波 倫子、猪阪 善隆
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学講座(泌尿器科学)
今村 亮一、川村 正隆、中澤 成晃、加藤 大悟、阿部 豊文、
野々村 祝夫
山口病理組織研究所
山口 裕
桜橋医誠会クリニック
京昌 弘
大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学講座
貝森 淳哉、市丸 直嗣
関西メディカル病院 腎移植科
高原 史郎

 症例は68歳男性。60歳時、蛋白尿・血尿を認め近医でフォローされていた。63歳時には下腿浮腫を自覚していたが加療はなく経過観察となっていた。64歳時、検診で検尿異常に加え、高血圧、腎機能障害を指摘され近隣の病院へ紹介となる。同施設で腎生検を施行し、光顕所見上MPGNと診断された。臨床的にもネフローゼ症候群の状態であったためステロイド治療が開始となった。その後電顕にて横紋筋様の沈着物を認め(Fig3)、IFではIgG1-κがmonoclonalに沈着していたことからMIDDが疑われた。血液内科にて精査を行うも明らかなmonoclonal gammopathyの所見はなく血液疾患の治療適応は無いため、腎炎に対するステロイド治療が継続された。ネフローゼ症候群のステロイド反応性は乏しく、腎機能低下も伴ってきたため、65歳時セカンドオピニオン目的に当科紹介となる。当院でも腎生検を行うが前医と同様の所見で、硬化糸球体が増加しており間質の線維化や尿細管萎縮など慢性所見の進行を認めた。免疫抑制剤の適応は見いだせず、保存的治療継続の方針となった。その後も腎機能は増悪し、66歳時に血液透析導入となる。透析導入時に腎移植の希望があり、生体腎移植の検査が開始される。術前検査は特に問題はなく、68歳時に妻をドナーとするABO不適合生体腎移植を施行した。術後3週間目に腎機能増悪を認め、グラフト生検を行う。糸球体炎および傍尿細管毛細血管炎を主体とする組織所見をより抗体関連拒絶を疑い、血漿交換およびステロイドパルスを行ったところ腎機能は速やかに改善を示した。その後腎機能の経過は順調であったが、退院直前に蛋白尿が出現し外来フォロー中に徐々に増加していった。蛋白尿の原因検索を含め3か月目のプロトコール生検を行ったところ、メサンギウム領域の拡大と基底膜の分節性の二重化などMPGN様の組織像を認めた(Fig1)。さらに管内増殖像や半月体形成などの糸球体病変も伴い多彩な糸球体腎炎所見を呈していた。凍結切片での蛍光抗体染色では有意な沈着を認めなかった。原疾患再発の確認のため電顕検査を行うと、糸球体に内皮下、メサンギウム領域および傍メサンギウム領域に移植前の腎生検と同様の横紋筋様沈着物を認めた(Fig2)。パラフィン切片で免疫染色を再度行ったところ、IgG1、κ優位の沈着を糸球体に確認した。以上の所見より原疾患の再発と判断された。しかしながら、本症例の特徴である沈着物の形態は既知のmonoclonalなimmunoglobulinに関連した腎炎とは異なるものであり診断に苦慮した。過去の文献を踏まえて本症例の診断について考察を行うとともに症例を提示したい。

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