腎移植後慢性血管型拒絶反応についての臨床病理学的検討
Clinical and pathological analysis of chronic vascular rejection after renal transplantation

戸田中央総合病院 移植外科
* 清水 朋一、尾本 和也
戸田中央総合病院 泌尿器科
小野原 聡、坂本 鉄志、西村 紘一、飯田 祥一、東間 紘
昭和大学医学部 顕微鏡解剖学
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理診断科
小池 淳樹

【目的】今回腎移植後、慢性血管型拒絶反応について臨床病理学的に検討した。

【方法】慢性血管型拒絶反応(CVR)をBanff分類のBanff scoreでの動脈内膜の線維性肥厚の指標であるcvと定義した。2010年1月〜 2017年8月で戸田中央総合病院での移植腎生検において、cv score≧1と診断されたのは23症例の30検体であり、これを対象とした。

【結果】男性16例、女性7例で全例生体腎移植であった。cvの診断は移植後平均1003日(55日〜 7242日)にされた。
拒絶反応の既往は14例(61%)にあった。Banff scoreではcv1を19検体に認め、cv2は6検体、cv3は5検体に認めた。
IF/TA(ct≧1 and/or ci≧1)は21検体(70%)と高率に認め、動脈内膜炎(v≧1)の併存を11検体(37%)に認めた。傍尿細管毛細血管炎(ptc≧1)は18検体(60%)に認め、間質炎(i≧1)は11検体(37%)、尿細管炎(t≧1)は9検体(30%)、糸球体炎(g≧1)は9検体(30%)に認めた。傍尿細管毛細血管へのC4d沈着(C4d≧2)は11検体(37%)に認めた。移植糸球体症(cg≧1)は4検体(13%)に認め、傍尿細管毛細血管基底膜の多層化(ptcbm)は7検体(23%)に認めた。細動脈硬化(ah≧1)は16検体(53%)、カニュシニューリン阻害薬の血管毒性(aah≧1)は8検体(27%)に認めた。中位動脈の動脈硬化は29検体(97%)に認めた。
生検前後で抗HLA抗体の検索は25回で施行され、抗HLA抗体陽性は22回(88%)でClass II陽性が計17回(68%)であった。DSA陽性は12回(48%)でClass II陽性が計11回(44%)であった。
 病理診断では、isolated v-lesion(IVL)が4検体(13%)、細胞関連型拒絶反応(TMR)は5検体(27%)、抗体関連型拒絶反応(AMR)が9検体(30%)、AMR TMRが2検体(10%)、borderline changesが1検体(3%)、cv以外の拒絶がないものが9検体(30%)であった。
観察期間中に2例(9%)の移植腎喪失があったが、15例(65%)は移植腎機能には影響が及ばなかった。

【結論】CVRの3 〜 4割は抗体関連型拒絶反応が関与して、3 〜 4割は細胞関連型拒絶反応が関与していると思われる。血管病変だけのIVLは1割に認められ、血管病変以外は問題がないものも3割あり、CVRと単なる動脈硬化との鑑別も難しいと思われる。またCVRが移植腎機能に影響を及ぼすのは35%程度であり比較的予後良好であった。

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