急性抗体関連型拒絶反応の活動性病変の評価

東邦大学医学部 腎臓学講座
* 荒井 太一、小口 英世、篠田 和伸、櫻林 啓、板橋 淑裕、
川口 祐樹、村松 真樹、兵頭 洋二、高橋 雄介、河村 毅、大橋 靖、
濱崎 祐子、宍戸 清一郎、酒井 謙
東邦大学医学部 病理学講座
三上 哲夫
山口病理組織研究所
山口 裕
東邦大学医学部病院 病理学講座
根本 哲生、渋谷 和俊

【背景・目的】2013年のバンフ会議において急性抗体関連型拒絶反応(Acute/active antibody mediated rejection:AABMR)の病理診断の改定が行われた。AABMRと組織学的に診断するためにDSAの存在が必要であるとされ、DSAの存在が証明できない場合はAABMR疑いとしている。今回我々は、最近2年間の生検検体を2013バンフ分類に基づき横断的に再解析し、組織学的にAABMRを疑う症例におけるDSAの陽性率および組織活動性について評価を行なった。

【方法】2016年1月〜 2017年12月まで当院で行われた移植腎生検269症例の345生検検体を対象とし横断的に解析を行った。AABMRの病理診断は2013バンフ分類に基づき診断した。微小血管炎の評価方法については、同分類に基づき、急性組織傷害はg>0かつ/または ptc>0、抗体による内皮細胞活性化の根拠は、中等度以上の毛細血管炎症(g+ptc≧2)とした。組織学的にAABMRが疑われた症例には、LABScreen Single Antigen検査を用いてDSAの有無を検討した。DSAはMFI≧1000を陽性とした。

【結果】2016年1月〜 2017年12月まで当院で施行された移植腎生検345検体のうち、AABMR疑いは23症例から生検された29検体(8.4%)であった。AABMR疑いの診断時期は平均23.0±26.6か月であり、移植後1年目生検までが17検体、1 〜 3年が7検体、3年〜 5年が1検体、5年〜が4検体であった。組織所見からAABMR疑いと診断された29検体のうち、プロトコール生検は24検体(83%)、エピソード生検は5検体(17%)、DSA陽性は19検体(66%)、既存抗体陽性は16検体(55%)であった。AABMR疑いの症例においてDSA未確定は1検体であった。AABMR疑い29検体において、g scoreの内訳は g0が3検体(10%)、g1が18検体(62%)、g2が8検体(28%)、g3はなし、ptc scoreの内訳はptc0が8検体(28%)、ptc1が1検体(3%)、ptc2が4検体(14%)、ptc3が16検体(55%)であった。ptc ≧3, ptc<3の2群にわけてg scoreの比較を行っても2群に有意な差はみとめず、ptcハイスコアにおいてもgスコアは高値でなかった。またDSA陽性(MFI≧1000)、カットオフ以下(MFI<1000)にわけて比較検討を行ったが、g score、ptc scoreおよび既存抗体陽性例の頻度に有意差は認めなかった。

【結論】当院における最近2年間の移植腎生検の横断的検討で、AABMR疑いとされる検体で、DSA陽性率は66%、既存抗体陽性は55%、プロトコール生検は83%であった。ptcハイスコアにおいてもgスコアは高値でなく、傍尿細管毛細血管炎が主たるAABMRの炎症主座であった。プロトコール生検が多いことから、比較的AABMRの活動性が抑えられていた可能性がある。したがって、これらのAABMRの病理変化が今後の検討課題になると考えられた。

戻 る  ページの先頭