怠薬により多彩な動脈病変を伴う抗体関連型拒絶反応を発症しグラフト喪失した1例
A case of kidney transplant graftectomy by severe antibody mediated rejection with variable artery lesions due to nonadherence to immunosuppressive treatment

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 松本 直人、小林 賛光、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、
勝俣 陽貴、勝馬 愛、眞船 華、中田 泰之、丹野 有道、
山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学 泌尿器科
小池 祐介、山田 裕紀、三木 淳、木村 高弘
山口病理組織研究所
 
山口 裕

 29歳男性。IgA腎症による末期腎不全により2011年2月17日に腹膜透析を導入した。同年7月14日に実父からのABO適合生体腎移植を行いsCr1.5mg/dl前後で退院となった。2012年10月にsCr3.7mg/dlに上昇し急性T細胞性拒絶反応(ACR ⅡA)を認めたが、ステロイドパルス療法を2クール行いsCr2.3mg/dlに改善した。2013年7月より外来受診しなくなり、約2ケ月の完全怠薬の後、2013年10月4日に呼吸苦・嘔気で救急受診となり、UN198mg/dl, sCr30mg/dlのため緊急入院。ステロイドパルス療法行うも、腎機能の改善得られず、血液透析再導入となった。移植腎は腫大し、腎生検にてthrombotic microangiopathy(TMA)と広範な間質出血、皮質壊死を認め、移植腎機能の回復は望めず、同年11月18日に移植腎摘出となった。摘出腎組織では、末梢血管から小葉間動脈を中心としたTMA所見に加え、葉間動脈から分節動脈にかけてはv2〜3、cv2〜3と高度動脈病変の新旧混在を認めた。C4dは残存した傍尿細管毛細血管に陽性を認め、怠薬をきっかけとした抗体関連型拒絶による変化と考えられた。本例では、通常の腎生検では観察しえない腎動脈に近いレベルにまでおよぶ拒絶反応に関連した種々の動脈病変を確認することができた。その詳細な組織像と病態につき文献的考察をふまえ報告する。

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