BKウイルス腎症におけるSV40 large-T抗原染色とBKV VP1抗原染色の比較検討.
Comparison of immunohistochemical staining for large T antigen and VP1 in polyomavirus nephropathy after kidney transplantation

福岡大学医学部 腎臓・膠原病内科学
* 升谷 耕介
九州大学大学院 病態機能内科学
松隈 祐太、土本 晃裕、中野 敏昭、北園 孝成
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学
 
岡部 安博、土井 篤、加来 啓三、中村 雅史
奈良県立医科大学 腎臓内科学
 
鶴屋 和彦

【背景】2013年にBanff Working Group on Polyomavirus Nephropathyより発表されたBKウイルス(BKV)腎症のクラス分類は、診断時および治療後の移植腎機能をよく反映することが示された。本分類の構成要素はpvlスコアとciスコアで、ほとんどの施設が腎症の診断とpvlスコアの評価にSV40 large-T抗原(TAg)染色を用いている。但し、ウイルスが増殖し、核内封入体を形成する、あるいは尿細管細胞や変性・脱落する時期にはTAgの発現は低下しVP1が増加することが示唆されている。また、SV40 TAg染色とBKVの後期蛋白であるVP1の染色を明確に比較した報告はない。

【対象と方法】対象は1996年〜 2017年に九州大学病院でSV40 TAg染色によりBKV腎症と診断した16症例28生検。
連続切片を作成し、共に市販の抗SV40 TAg抗体と抗BKV VP1抗体による免疫組織染色を行い、染色所見と陽性尿細管数(%)を比較した。初回生検については両染色の陽性尿細管数と診断時の移植腎機能を比較した。

【結果】BKV VP1染色では尿細管細胞核の他に細胞質、管腔内の脱落細胞、円柱などに陽性所見を示したが、SV40 TAg陽性の28生検中2生検(7.1%)がBKV VP1染色陰性であった。染色陰性の2生検はSV40 TAg染色でもpvlスコア1の検体であった。SV40 TAg染色とBKV VP1染色における陽性尿細管数(%)はそれぞれ2.8(0.7-9.8)%、1.4(0.5-3.9)%であった(P=0.2)。BKV腎症と初回診断した16生検において、ベースラインからの血清クレアチニン値の上昇とBKV VP1陽性尿細管数は有意な正の相関を示したが(r=0.49, P<0.05)、SV40 TAg陽性尿細管数との相関は有意ではなかった。

【結論】BKV VP1染色は多彩な陽性所見を示すが、陽性尿細管数はSV40 TAg染色の約半数であり、BKV陽性尿細管が少ない標本では偽陰性を呈する可能性がある。一方、VP1の強発現は尿細管細胞におけるBKV粒子の増加、細胞障害を介して移植腎機能障害と関連する。

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